でも京都の人が全員自分とこの家紋を知ってるわけやないですよ。そやけど、京都の人って自分のルーツを語るの好きなんです。こういうお墓参りする時期は特にウズウズしてる人が多いのとちゃうかなぁ…ここにも約1名おりますが。そういう時に、家紋は話をする相手との共通点を探す手段になるんですよ。

A「うち源氏ですねん。笹竜胆です。」
B「へぇ、うちは揚羽蝶やし平家ですわ。」
C「私とこ丸に四ツ目結です。」
D「いやっ!うちもそうですよ!角が立ってるほうですか?寝てるほう?」

角が立ったり寝たり、どうでもええような気がしますが、そのお家にとっては大事な家紋。それぞれに歴史があり誇りに思ったはるので、そこは実は大きな違いなんですよ。でもほんまのところそこに固執してるわけでもなくて、おしゃべりの中でそれぞれのお家の歴史を知って楽しんでる、と言うたほうがええかもしれません。これも「お寺トーク」の一つなんでしょうね。こんな会話、昔は結構あったし面白かった。今は知らん人のほうが多いし話が続きません。ほんま残念なことです。

おはぎを食べて「お寺トーク」が定番

お盆の時期にもお墓参りは行きますが、みんな行く日がずれるのかあんまり会わへん親戚も、お彼岸は大体お中日(春分の日・秋分の日)に行くことになるのでよく出会います。そんなときに始まるのが我が家のルーツのお話。またまた「お寺トーク」ですよ。

「何代前のお祖父さんはこんな人やった。」
「お宅のひいお祖父さんとうちのひいお祖母さんが兄妹で~」

とか、昔はようありました。長老の人らの話を聞いて、自分らのご先祖さんがどんな人やったかを学ぶパターンは、きっとお墓の前で何代も繰り返されてきたに違いありません。

お家への帰り道には、家の近くやちょっと有名なお饅屋さんで美味しいおはぎを買います。京都のお饅屋さんは街中にまだまだたくさんあって、わざわざ作らんでもすぐにゲットできるおはぎ。それをおぶったん(お仏壇)にお供えしてご先祖さんと一緒にいただく、そんなホッとするような幸せがありました。年長の家族とおはぎを食べながらお彼岸に学ぶ昔話。そこでは「お寺トーク」がさく裂してたかもしれませんね。

撮影:いぬいしずか

石投げたらあかんけど、投げたら必ず当たるくらいお寺の多い京都。「お寺トーク」が他所よりかなり多いのは間違いありません。こういった知識はどうしても必要なものやないかもしれんし、知らんでも困らへんし普通に生きていけるでしょう。でも、もし知ってたら、京都暮らしはきっとう~んと楽しくなるんです。今年は遠いところにも遊びに行きづらい。お彼岸の「お寺トーク」、地元にひきこもり京都人のお彼岸はこれで決まり?!

注:
(1)京都府の寺院:3068(平成30年度宗教統計調査)
全国で1番多い都道府県ではないですが、京都市は1608(平成19年度京都市統計書)で、京都府全体の半分以上の数があります。 
(2)「紅白」は紅の色が濃くて黒っぽい色をしているので、普通の「赤白」とは区別をして「紅」の文字を使っています。
(3)単純に黄白の水引しかなかった、という説もあります。また、水引には結び切りは蝶々結びはなく、淡路(あわび)結び1種類です。
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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
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