珠数をオーダーしてみました

甥が大きくなってきたので、そろそろ大人用の珠数を作ろうとなりました。
大人が選んで渡そうかと思いきや、甥が何やら色や素材に思い入れがあるようで、自分で選びたいと言いだし、それならば、いつもお世話になっている珠数屋さんを訪ねました。以前にもこちらで、経年劣化で変色した房の交換や、糸が切れてしまったときも、修繕していただいたことがあります。

珠数作成の工程

① 珠選び:今回は片手用の略式珠数を作ってもらいます。男性用は珠の大きさが女性用に比べて大きく、渋い色が多いのですが、近年は男性用といっても明るいトーンの色合いの珠も出てきたり、女性でも大きい珠を選ばれたりすることもあり、以前に比べて自由度はアップしてきているそうです。今回は一見黒く見えますがよく見ると、青色の模様が入っている青虎目石を選びました。

珠のサンプルを見せていただきました

珠のサンプルを見せていただきました

(於:竹中源)

② 房:選んだ珠に合うように色を選びます。オススメいただき今回は、黒と紺色の2色の紐房にしました。

③ 通し作業:珠を通す中糸は太く柔らかいものを使います。糸の先端を細く削り、珠を仮通してある糸と結んで通します。ボサ→親玉→主珠と順番に通していき、決まった位置に天珠を入れていきます。ひととおり通し終わると、再度親玉、ボサに通して輪にします。

④ 四つ組み:輪にしてボサから出ている2本の糸のうち、一方を組台の上にある金具に引っ掛け、もう一方の糸をほぐして軸糸を1本足し、四つ組み(四つ編み)します。四本の糸が驚く早さで編まれて、これぞ職人技を見せていただきました。台に引っ掛けていたもう片方も四つ組みします。

四つ組みしている様子

四つ組みしている様子

(於:竹中源)

⑤ 房付け:新松房の場合は四つ組みされた糸の先端から、房を通します。房に頭部に空いた穴に糸を通し、長く余った糸はのり付けし、房の内側に巻いて留めます。紐房の場合は四つ組の下に結びを作り、紐を長く残して切りそろえます。

⑥ 完成:房に蒸気を当てて形を整え、珠数のしなやかさなどをチェックし、紙箱や木箱などに納め、珠の素材が書かれたシールなどを貼り完成です。全国の仏具販売店や百貨店などに納品されます。

完成した珠数

完成した珠数

今回、オーダーして職人さんに作っていただきましたが、所によっては珠数作り体験を受け入れられている工房もあります。手先が器用な方でしたら(そうでなくても)、ご自身で珠数を作ってみるというのはいかがでしょう。

珠数制作体験の様子

珠数制作体験の様子

(於:中野伊助)

参考文献
京都珠数製造卸協同組合ホームページ. (2023).
谷口 幸璽. (1996). 数珠のはなし. 宝蔵館.

記事の内容について中野伊助 中野恵介さん、竹中源 竹中義博さんにご教授いただきました。

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この記事を書いたKLKライター

おきにのうつわ
食空間コーディネーター 工芸品ディレクター
三谷 靖代

京都生まれ。祖父の代まで染屋を営み、親戚一同“糸へん”の仕事にたずさわる環境で育ち、学生時代はファッションを学び、ウェディング業界へ就職。そこで出会ったテーブルコーディネートに感銘を受け、後に食空間コーディネーターとして起業。京都の伝統産業の産地支援や、五節句や年中行事など生活文化を次世代に伝える活動を行っています。京焼・清水焼の卸売をする夫と夫婦ユニット「おきにのうつわ」を結成して、京焼・清水焼の魅力の発信や講演、展示会プロデュース、また陶磁器以外の伝統産業品のPRや観光業とのコラボなども手がけています。近年スタートさせた「伝活」では実際に京都の伝統産業品を愛でたり、使っている様子をSNSで紹介。
特非)五節句文化アカデミア 理事

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食空間コーディネーター 工芸品ディレクター|うつわ/清水焼/伝統産業

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