京都以外の方と話すとき「あ、この感覚って京都人独特のものやったんか」と気づくことがあります。先日公開した「京都カーストは本当に存在するのか~西京極から見た京都カースト~」への感想でも、同世代らしき京都育ちの方々から「この人の感覚がよくわかる」と言ってもらい、なるほどと思いました。

わたしは京都人の中のたった1人ではありますが、世代や住んでいる場所が近いと、感じていることがリンクしやすく、共通の「肌感覚」が形成されます。なので長く「京都(※範囲は人によってこだわりがあるものとする)」で暮らしてきた人間特有の肌感覚を残すことは意外と面白いかもしれないと考え、この記事を執筆します。

もちろん、京都には京都人特有の肌感覚があり、しかもそれぞれの「立場」によっても肌感覚が異なります。そこで、この京都人がもつ「立場による肌感覚」から垣間見える京都カーストについて論じてみたいと思います。
ちなみに「家柄」はどうしようもないので触れません。自分の力である程度コントロールすることもできて一定の評価があるもの、たとえば「学校」や「行事や祭へのご奉仕」などに見られる京都カーストを、わたしの肌感覚で語らせてください。

学校から見た京都カースト

京都は学問のまちです。たくさんの学校があり、名門校もわんさかあります。わたしは経済的事情で私立学校に通うという選択肢がなかったので、私立はどこも羨ましく、キラキラして見えます。わたしも同志社や立命館に行ってみたかった・・・

わたしの小さい頃は、いわゆる「よいご家庭」のご息女は(小学校まではご子息も)ノートルダムに通われている方が多かったです。濃い茶色の上下の制服とすれ違うと、「ダム女(だむじょ)や!」とそわそわしたものでした。最近見かけないと思ったら、今はデザインが全く変わっているんですね。それと同じく目に留まるのは、洛星中学・高校の茶色いカッターシャツです。見るたびに「うわあ!頭がよさそう!!」と反射的に思ってしまいます。
また、京都女子高校の制服に校章の金バッジが輝いているのもとてもカッコ良いです。どれも、自分が小さな頃に受けた印象のまま輝いています。

他にも、龍谷大付属平安高校を見たら「野球が強いんだろうなぁ」、京都橘高校を見たら「吹奏楽が強いんだなぁ」と思います。勉強もスポーツも文化部も、さまざまなものに強みがある学校がたくさんあるのは幸せなことですよね。

もちろん国公立の学校もすごいです。ノーベル賞などのいろんな話題に事欠かない京都大学はいうまでもありませんね。これは何度か聞いたことがある笑い話ですが「大文字(送り火)でふざけて点灯して『犬』にしても許されるのは京大生だけ」というものがあります。実際にあった事件の時はもちろん非難轟轟だったと思いますが、今はなんとか笑い話に着地できています。

高校の話をしましょう。街中を歩いていると中学生向けの進学塾の看板に「堀川○名 西京○名 嵯峨野○名」という合格実績が書いてあるのを見たことがありませんか?これは京都の「公立御三家」です。20年以上前にいち早く探究学習をはじめたトップの堀川高校に、エンタープライジング科を擁する西京高校、京都こすもす科の嵯峨野高校が続きます。わたしは嵯峨野高校出身なのでこの広告を日々気にしているのですが、もともと2番目に記載されることが多かった嵯峨野が最近3番目に落ちるようになり、ハラハラしています。

ちなみに京都市内で仕事をするようになってから「嵯峨野こすもす出身です!」と言って信頼を得る機会が意外と多くあります。大学は京都府外なので、高校名の方が話が通じやすいんです。学歴に関しては高校時代の栄光にずっとすがらせてもらっています。

また、今は御所南小学校の人気がすごいですね。この後、小中一貫教育の京都御池中学校に進んで、堀川高校に進学するという理想的な進学コースがあるみたいです。「御所南」エリアがどんどん人気になって栄えていくのを見ていると、学校の影響力がすごい勢いなんだろうなというのが察せられます。

芸術でいえば公立とは思えないくらいレベルの高い京都堀川音楽高校や、京都府画学校からの伝統がある美術工芸高校(元・銅駝美術工芸高校)などもありますね。
ここで挙げていない学校でも、名門や優秀なところがめっちゃたくさんあります。すべての学校は出身者・関係者の誇りであることでしょう。京都の歴史には欠かせない番組小学校ももちろん。どれも大事にしていきたいものです。

行事や祭のご奉仕から見た京都カースト

京都では歴史のある行事やお祭りが多く残っています。そのご奉仕をしている人って特別でカッコいいです。

カーストという視点で見るなら、私的トップは女性なら葵祭の「斎王代」、男性なら「長刀鉾のお稚児さん」です。どちらも自分でなりたいと思ってもなれないもので、家柄などが大きく関わってくるものですね。だからこそ、本物のお姫様や王子様を見るような気持ちで、憧れが強くなります。

葵祭、祇園祭、時代祭などお祭りへのご奉仕はご縁やつながりから始まることが多いですが、ボランティアやアルバイトの募集もあるのでやってみたい方は新たにご縁をつなぐことができるかもしれません。行列などのご奉仕は装束が重く、良い姿勢で長い距離歩かないといけないので学生バイトさんをとても必要とされるそうです。

昔、祇園祭のある鉾町の方にお話を伺ったとき「自分の若い頃は、山鉾巡行で好きな女の子にちまきを投げていた」という話がありました。今はできませんが、特別な場所から自分にちまきを投げてもらったらものすごくカッコよく見えると思います!

また、わたしがデパ地下で学生バイトをしていたとき、隣り合っていた和菓子屋の店長さんがその和菓子屋の一族の方でした。30代くらいのお兄さんだったのですが、バイトの女の子(わたしともう一人)に向かって「おれ、実は送り火に火つけたことあんねんで」とドヤ顔で発言されました。わたしは「すごい!カッコいい~!!」となったんですが、京都出身ではないもう1人には、あまり響いていないようでした。たしかに、肌感覚がないとこれすごいってなりませんよね。火をつけたことがすごいというよりは、火をつけさせてもらえるお立場なのが特別ですごいという感じです。

他にも、わたしの友人でイスラーム美術を研究している人は吉田神社のご奉仕をしていますし、勤務先の社長専務は祇園祭のお神輿のご奉仕をして7月は忙しくしています。京都で生きて、何らかのご奉仕をしている人はカッコいいです。わたしも、いずれ心血を注ぐものに出合える日が来るのかなとわくわくしております。

お稽古事から見た京都カースト

お茶、お花、楽器、踊り。京都にはさまざまなお稽古事があり、流派があり。すごい方は何らかのお稽古事をして自分を高められている印象があります。

どのお稽古事がすごいとかは言えませんが、「お茶」に関してびっくりした経験があります。大学を卒業してから就活をはじめた愚かなわたしは、ある日「京都府伝統産業の合同就職フェア」に行きました。その頃から京都が好きだったので、良い仕事がないか探していたら京都の文化関係の出版をされている会社のブースがありました。話を聞こうとブースに近づいたらスタッフさんから突然「何流ですか?」と聞かれました。

「まだ茶道は習ってません」と答えたら、なんとスルーされて、もう話を聞くことができませんでした。わたしの後から来た女性は「裏千家で〇〇先生に教えてもらってます」と言い、ブースの中へ通されました。取り残されたわたしは「就職フェアなのに説明も受けられないの!?」と憤ったものです。本当にびっくりしました。きっと、とても空気の読めないことをしてしまったんだろうなあと、今なら思うことができます(でも話は聞きたかったです)。あの瞬間、あのスタッフさんにとって、わたしはカーストの最低ランクだったのでしょう。

茶道はわたしにとって、いつか習ってみたいお稽古事ランキング1位で、人生の目標のひとつでもあります。いま見ているのとは違う世界が開けそうな気がしています。

立場から見た京都カースト

できるだけ肌感覚を大事にしたかったので、自分が関係した事象しか挙げられませんでしたが、肌感覚の片鱗は伝えられたのではないかと思っています。
立場には選べるものと選べないものがあります。生まれた場所や家柄はどうにもなりませんが、自分がどういう生き方をして、何に関係して生きていくのかというのは選ぶことができますし、自分の生き方で新しいご縁が生まれることもあります。理不尽なことや、そんな環境も含めて楽しむことが、京都生活を楽しむコツかもしれません。そして、立場によって異なる想いやこだわりを相互理解し合うことが大事です。

わたしは京都で生きていく中で、これからすてきなご奉仕やお稽古をしたいと思っています。「〇〇やってるんや。すごいなぁ!」とぜひ言われてみたいです。

※KLKの京都カーストシリーズは地元愛に根差したプライド(時には自虐も)をコンセプトにしています。そこに登場する行政区や特定エリア間で本気で優劣を競うものではございません。

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この記事を書いたKLKライター


山田 めいね

Kyoto Love. Kyoto編集部スタッフ。京都が好きで入社し、Kyoto Love. Kyotoの編集や記事制作を行っています。

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