「信長の野望」が語る光秀の真価と戦国京都 【光秀特集】
戦国シミュレーションゲームの大家「信長の野望」の視点からとらえた明智光秀の真価と戦国京都の位置付けが語られています。派手さはないが重要なキーワードである「教養」を軸に戦国時代を再現。また、武将の能力ランキングは本文とは別に、それだけで楽しめます。
有能ゆえの悲劇
皆さんの感想はいかがですか。これほどまで光秀がスゴイって意外なことないですか?ちなみに光秀を討ち果たした羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)は戦闘が74、教養が67とバランスよくないですよね。それでもトータルでは光秀と3ポイントしか変わらないのは流石です。
しかし、この両者の通信簿の違いがやがて本能寺の悲劇へと向かわせたような気がします。光秀は出来が良すぎたのです。秀吉と比べてみるとよくわかります。もちろん秀吉も優秀な武将で、信長は光秀と秀吉を競わせていました。しかし、この2人で決定的に違ったのが「教養度」です。秀吉はご存知のとおり農民出身の武将です。20歳過ぎまで文字が読めなかったという説もあります。当然、教養を身につける機会などなかったでしょう。しかし、彼はそれをハンデとせず、むしろ無教養キャラを全面に出すことで信長に気にいられます。いっぽうの光秀、こちらはオール5の成績をとる典型的優等生。部下にしたい人№1かもしれません。でもなんとなく好きにはなれない。ドラえもんで、のび太のクラスメートに出木杉くんという優等生がいますが、彼に共感をおぼえる人は少ないでしょう。それと同じ感覚ですかね。このような元々あった信長と光秀のミゾが、いつの頃からかどんどん深くなり、ついには光秀を謀反に走らせました。本能寺の変の原因の1つはここにあると言ってよいでしょう。
あらためて実感、「信長の野望」の魅力。
この光秀と秀吉の対比からうかがえるのは、人の成功は必ずしも能力が全てじゃないってことです。あまり出来すぎるとかえって遠ざけられる。やっぱり愛嬌も大事なんですよね。ここが人間社会の難しいところ。ゲームを通じてそんなことをシミジミと考えさせてくれたのが「信長の野望」です。オトナがのめり込めるゲームだけのことはありますね。
と同時に、この武将風雲録では京都の重要度が他のシリーズより高くなっています。教養度をUPさせるには、公家衆や茶人をはじめとした文化人が集う京都を押さえ、そこで茶会や取引をくり返すことがてっとり早いからです。京都で千利休との茶会が実現できれば効果絶大です。このゲーム設定にリアリティがあるかはともかく「天下統一を夢見る武将はみな京都を目指した」とされる構図はリアルに再現されていると思います。他の信長シリーズでも京都を押さえることが重要とされながらも、それは気分的な意味合いが強く実質的な効果は薄かったように思います(もちろんゲームなので、気分を味わうことにも意味はあります)。対して武将風雲録では、京都がゲームの攻略上で重要な意味をもっており、そこが京都人の私がのめりこんだ理由の1つだったように思います。
たかがゲーム、されどゲーム。日本を代表する歴史シミュレーションゲームで京都がリアルに描かれているのは嬉しいかぎりです。
さあ、今週末も夜なべで戦国時代へタイムスリップだ!!
(編集部/吉川哲史)
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祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。
日本語検定一級、漢検(日本漢字能力検定)準一級を
取得した目的は、難解な都市・京都を
わかりやすく伝えるためだとか。
地元広告代理店での勤務経験を活かし、
JR東海ツアーの観光ガイドや同志社大学イベント講座、
企業向けの広告講座や「ひみつの京都案内」
などのゲスト講師に招かれることも。
得意ジャンルは歴史(特に戦国時代)と西陣エリア。
自称・元敏腕宅配ドライバーとして、
上京区の大路小路を知り尽くす。
夏になると祇園祭に想いを馳せるとともに、
祭の深奥さに迷宮をさまようのが恒例。
著書
「西陣がわかれば日本がわかる」
「戦国時代がわかれば京都がわかる」
サンケイデザイン㈱専務取締役
|八坂神社中御座 三若神輿会 幹事 / (一社)日本ペンクラブ会員|戦国/西陣/祇園祭/紅葉/パン/スタバ
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