聖護院ダイコン

聖護院ダイコン

江戸時代の聖護院ダイコンは長ダイコンだった

ミズナ

ミズナ

江戸時代のミズナは根が肥大していた

秀吉によって建てられ、また壊された聚楽第の堀の埋立地にごみが捨てられた。
その堆肥化したところに育ったゴボウが美味しいことから、巨大な越年ゴボウである堀川ゴボウとなった。
堀川ゴボウは播いて育てたゴボウでなく、移植して大きく育てられた2年目のゴボウであり、中央部は空洞になるが表皮は柔らかく特有の香りのあるものが優良品とされる。

次いで2番目には、京都の立地的特性を利用して、京野菜の付加価値を高めてきた技術があり、これらは全国規模で見て京都に早く起こったものである。
古くは室町時代の初期、京都南部の淀でナス、キュウリの早作りが行われていた。
これはこの一帯が砂地で冬季でも太陽熱で暖まりやすかったことと、周辺の湿地帯にあったヨシが防風の役割を果たしていたためである。

エビイモ

エビイモ

江戸時代に下京で、ゴミの埋立地で堆肥化したところでサトイモが萌芽しているのを見た篤農家があり、腐熟した堆肥が発酵熱を出していることに気がついた。
早速そのことを応用してショウガ、サンショウの促成栽培に成功している。

安土桃山時代に秀吉は京都市内を外敵から守るため、土塁を京都の周辺部に築いたが、その際低地に湧き水があったところでセリ栽培が始まった。
地下水はいつも15℃前後で冬暖かくて夏は冷たいため、良品を早く栽培することが可能となった。
江戸時代の終わり頃伏見で湧き水を利用し、暗所で軟白して育てたミョウガの促成栽培が始まっている。

なぜ京都では保存されてきたのか?

京都では伝統的に食生活を守る傾向があって、季節ごとの料理や祭事が守られ、おもてなしの料理も発展している。
そのため料理法ごとに保存されてきた京野菜が、京都の人々に大事に守られてブランド野菜として残ってきた。
また消失にいち早く気づいて保護育成されたこと、更に研究機関での原種維持や改良されてきたことも大きい。
京都では京野菜の魅力の情報発信をするため、「京野菜検定」を行うと共に、私もお手伝いをして「京野菜マイスター」の認定を行っている。
海外でも日本の伝統野菜に興味を持たれており、米国の園芸学会の依頼を受けて2009年に京野菜の紹介をしている(3)。

参考資料
(1)藤目幸擴.2011.平成23年度野菜茶業課題別研究会「地方野菜の現状と将来展望」.
(2)京都名所図会.1997.宗政五十緒・西野由紀.小学館.pp127.
(3)Fujime, Y. 2012. Introduction to Some Indigenous Vegetables in Japan. HortScience, 47(7):831-834.
(4) 藤目幸擴. 京野菜の技術的変遷と地域振興への取り組み. 農耕と園芸. 2012年7月号:20-23.
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この記事を書いたKLKライター

京都府立大学 名誉教授
藤目 幸擴

 
生年月日:1945年(昭和20年)1月5日

現職
京都府立大学 名誉教授、タキイ財団 理事、NPO 京の農・園芸福祉研究会 理事長、(一財)京都園芸倶楽部 会長

主な経歴 
1969年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了、香川大学・京都府立大学教授を歴任
1982年 京都大学農学博士
1984年 園芸学会賞奨励賞
2008年 京都府立大学農学部定年退官・名誉教授
1985~1986年 ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学へ出張(国際協力機構) 
1993~1994年 英国ロンドン大学を中心に欧米7カ国 へ出張(文部省長期在外派遣)
1997年 デンマーク植物と土壌科学研究所へ出張(学術振興会派遣研究員)
この間に欧米、アジアなど約30カ国での国際シンポジウムに参加すると共に、留学生10名に学位論文の指導を行う

主な著書  
Q&A 絵で見る野菜の育ち方、農文協、2005
野菜の発育と栽培、農文協、2006
ブロッコリーとカリフラワーの絵本、農文協、2007
ブロッコリーの生理生態と生産事例、誠文堂新光社、2010
ブロッコリーとカリフラワーの作業便利帳、農文協、2010
はじめてのイタリア野菜、農文協、2015
「おいしい彩り野菜のつくりかた」(監修) 農文協、2018

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藤目 幸擴

 
生年月日:1945年(昭和20年)1月5日

現職
京都府立大学 名誉教授、タキイ財団 理事、NPO 京の農・園芸福祉研究会 理事長、(一財)京都園芸倶楽部 会長

主な経歴 
1969年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了、香川大学・京都府立大学教授を歴任
1982年 京都大学農学博士
1984年 園芸学会賞奨励賞
2008年 京都府立大学農学部定年退官・名誉教授
1985~1986年 ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学へ出張(国際協力機構) 
1993~1994年 英国ロンドン大学を中心に欧米7カ国 へ出張(文部省長期在外派遣)
1997年 デンマーク植物と土壌科学研究所へ出張(学術振興会派遣研究員)
この間に欧米、アジアなど約30カ国での国際シンポジウムに参加すると共に、留学生10名に学位論文の指導を行う

主な著書  
Q&A 絵で見る野菜の育ち方、農文協、2005
野菜の発育と栽培、農文協、2006
ブロッコリーとカリフラワーの絵本、農文協、2007
ブロッコリーの生理生態と生産事例、誠文堂新光社、2010
ブロッコリーとカリフラワーの作業便利帳、農文協、2010
はじめてのイタリア野菜、農文協、2015
「おいしい彩り野菜のつくりかた」(監修) 農文協、2018

|京都府立大学 名誉教授|京野菜/伝統野菜

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