竹、食べられます。
パンダが食べています。

愛くるしいパンダの赤ちゃんの映像をみていると、ササの葉だけでなく、確かに竹そのものを食べています。

ジャイアントパンダは、肉食動物。
争いを避けて生存する為に、中国の山岳地帯に逃げのび、そこで暮らすことを選びました。
その地に、一年中茂っていたのが竹や笹。
他の動物は竹なんて食べないので、競争も起こりません。

ただし、竹の棹を食べているというより、顎で砕いて、竹の繊維の隙間にある僅かな栄養分を取り出し、消化のできない繊維部分はそのまま糞に出します。
食べた量の20%弱しか養分は取れないようです。

もともとは肉食動物なので、出されれば肉も食べるものの、決して好みではないらしく、
ある意味、生来のビーガンです。

竹、人間も食べています。筍として。
竹の旬は筍なのかぁ?竹の伐り旬は冬場なのに~と、竹屋としては思うのですが。
ともあれ、竹の旬と書いて、筍(タケノコ)。

筍には栄養分も含まれているという研究結果があり、タンパク質やビタミンが多く含まれていて、キャベツやタマネギと比べても劣らないそうです。
さすが成長の早い竹だけあって、スタミナをつけるアミノ酸も多く含まれています。

そして、パンダが80%排出している繊維質。

人間には、腸の健康を促す事に役立ちます。

主に食べているのはモウソウ竹の筍。
他にハチクやカンチクの筍も食用です。
ただ、このシリーズでさんざん登場する日本固有種の真竹(マダケ)は、実は苦くて食べられないのです。
なので、真竹の別名を「苦竹(ニガタケ)」と言います。

『朝堀りの筍』と言われますが、朝に堀った筍をその日のうちに食べるのが、いちばんおいしい食べ方。
逆に言うと、掘った筍は直ぐに食べなければならない!というプレッシャーに翻弄されることも。
それは、筍に含まれるアミノ酸の一種のチロシンの仕業のせいです。
このアミノ酸が旨味成分である、と同時に、酸化が早く、酸化すると“えぐみ”に変わります。
鮮度が落ちると皮が黒くなるのですが、地表にでた時点で既に黒くなり始めます。
なので、酸化の始まる前、つまり地表に出る前の筍が美味しい、という訳です。
さすが成長の早い竹の子だけあって、酸化も早い!何をやらせても、仕事が早すぎる!

竹の皮

竹の皮

そして、筍の皮。
筍が竹に生長するにつれて落していく、あの茶色っぽい皮。
時代劇でオニギリを包んでいるのが「皮」です。
内側がツルっとしている為、くっつかない事や汁がしみでない事で重宝されたようですが、何より、殺菌作用と防腐作用を持っている事。
オニギリを包むのも防腐、つまり保存を考えての事です。
ここでも、竹の特殊な能力が、効果的に活用されていました。


 さて、今回のタイトルは「竹と食彩」。
食を彩る竹がテーマで、パンダとタケノコとオニギリは前座だったのですが、すでにページ数の5/3をオープニングアクトが占めてしまいました。
ですので、、、本編はサクっと!

竹が木とも草とも違う個性は、空洞になっている事と、節がある事。
身近な材料であった竹《今は、竹って、そう簡単には生えていないので、身近でもありませんが。竹屋も近所に無いし~。》は、単純な加工で形が変わり、その特徴を活かすことで、器となります。 

青竹羊羹

青竹羊羹

青竹羊羹を食された事もあるでしょう。
空洞と節の活用例です。
竹のみずみずしさが、夏の涼しさを演出します。

おせち料理の器。
黒豆とかが入っていそうです。
厳粛な一年の計をたてる日にピッタリ。 

青竹が、年始を感じさせるものなのか?夏を感じさせるものなのか? 
季節は真逆ですが、何よりも、青竹の清涼感と鮮やかな色が、食材を彩るということなのでしょう。

青竹のカップ

青竹のカップ

青竹のカップ。
日本酒を入れると「二級酒が特級酒になる」と文献に書かれています。

竹の油とビタミンKとクロロフィルが、燗をすることで溶け出し、味を変え、健康にも効果があるとか。
僕にはその味の違いはわかりませんが。。。

竹はビアグラスにも。
竹の成分なのか、内側の形状なのか、で泡が細かくなり、まろやかな美味しいビールに進化。

とある番組で、青竹のグラスで冷たいビールを頂くという撮影があり、朝から始まったロケの夕方にビールのシーン。
本番前にググっと2杯、リハで1杯、本番で1杯。あまりに美味しくて、グイグイ、グイっと!

竹の味がにじみでていたから? いえ、カラッカラに喉が渇いていただけ・・・

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この記事を書いたKLKライター

銘竹問屋四代目・ギタリスト
利田 淳司

 
1967年京都市生まれ。
関西学院大学法学部卒。
1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

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利田 淳司

 
1967年京都市生まれ。
関西学院大学法学部卒。
1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

|銘竹問屋四代目・ギタリスト|竹/明智藪/嵐山/祇園祭/ギター

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