ロスタイムとなる信号待ちをなくすには、そもそも信号の多い大通りをパスするのが一番。そこで碁盤の目の町・京都ならではのテクニックをご紹介します。サンプルとして堀川丸太町をあげてみます。堀川も丸太町も幹線道路で、かつては西南の角にホテルニュー京都がデーンと構えていた交差点です。さて、この堀川丸太町より北東のエリアを配達するとします。ここで問題になるのが東堀川通りです。小川のせせらぎが聞こえる「堀川」を挟んだ東にあるバイパスで、南行の一方通行となっています。この東堀川での信号待ちが、めっっっちゃくちゃ長い!!のです。念のためさっき現地で計ってきました。青信号がわずか15秒に対して赤信号がなんと120秒も続くのです!青と赤が1:8の比率ですよ。いくらなんでも不公平すぎません?しかも、青になったと思っても、数人の歩行者待ちがあると2~3台の車しか通れないこともあります。この大いなるロスを避けるためのルートが、次の図です。かなりややこしいので順に説明します。

堀川丸太町 北東エリアの配達ルート

堀川丸太町 北東エリアの配達ルート

年がら年中「開かずの信号機」を回避する奥義。

①東堀川を南下し、丸太町の手前まで配り終えると、②ギュイーンとバックし椹木町通りまで戻り、③東に入ります。④油小路を再びギュイーンと丸太町までバックしてから、⑤油小路沿いの配達を片づけます。これぞまさしく上ル下ルの配達術です。これは油小路の道幅が比較的広いからできるワザであります。もちろん、バックで十字路を通過するときは細心の注意を払うのは言うまでもありません。荷物が減って後方視界が確保される、配達コースの後半でしか使えない裏技です。 

※ちなみに一方通行のバックも「逆通行」となり違反となります。今をさかのぼること約四半世紀前のできごとであり「若気の至り」として大目に見てやってくださいませ。

 

一方通行のプチ謎

先ほどの裏テクは他の場所でも活用できますが、一方通行の関係をしっかりアタマに叩き込んでおくことが大前提です。原則的には「北行→南行→北行」と交互に入れ替わることが多く、その場合はコースも組みやすいのですが、「北行→北行」と同じ方向の一方通行が続くと、空回りのロスが生じます。では、ここで「京都の不思議、一方通行編」をご紹介しましょう。まずは一方通行がぶつかりあう千本下立売の交差点です。東西の通りである下立売通の一方通行が、千本通で西行きと東行きが正面衝突します。他府県ナンバーの車がときどきパニックになって立ち往生しています。面白いことにこの1つ北の交差点、千本出水では、逆に千本通りを境に西行きと東行きの両別れとなっています。

千本下立売の交差点

千本下立売の交差点

一方通行のご対面、なすわち進入禁止のお見合いでもある。うっかり直進してしまうと、逆行となり大ヒンシュクに…。

当時の配達所の所長が大阪出身で、「こんなん大阪ではありえへん」と言ってました。千本通りは平安京におけるメインストリートであり、かつ千本下立売一帯は天皇が住まう内裏があったことと関係しているのかもしれません。と自説を披露しようと思ったら、西陣郵便局の東にある今出川浄福寺も、両サイドに一方通行が別れていました…。この不思議現象の理由をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ編集部までお知らせください。

千本出水の交差点

千本出水の交差点

先ほどの例とは逆に背中合わせの図となる。

というわけで、今回は「碁盤の目の町」の攻略法をお話ししました。現役ドライバーのころは、目の前にある山のような荷物をさばくことでアタマがいっぱいでしたが、今にして思えば配達をつうじて京都独特の町並みを楽しんでいたような気がします。そこで、京都で配達する現役ドライバーの皆さんへメッセージです。そんな余裕がないことは百も承知のうえですが、同じ仕事をするなら京都を体感し、町を楽しみながら走っていただければ、京都人として嬉しく思います。あ、でも私のマネはしないでくださいね。

(編集部/吉川哲史)

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この記事を書いたKLKライター

八坂神社中御座 三若神輿会 幹事 / (一社)日本ペンクラブ会員
吉川 哲史

祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。

日本語検定一級、漢検(日本漢字能力検定)準一級を
取得した目的は、難解な都市・京都を
わかりやすく伝えるためだとか。

地元広告代理店での勤務経験を活かし、
JR東海ツアーの観光ガイドや同志社大学イベント講座、
企業向けの広告講座や「ひみつの京都案内」
などのゲスト講師に招かれることも。

得意ジャンルは歴史(特に戦国時代)と西陣エリア。
自称・元敏腕宅配ドライバーとして、
上京区の大路小路を知り尽くす。
夏になると祇園祭に想いを馳せるとともに、
祭の深奥さに迷宮をさまようのが恒例。

著書
「西陣がわかれば日本がわかる」
「戦国時代がわかれば京都がわかる」

サンケイデザイン㈱専務取締役

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得意ジャンルは歴史(特に戦国時代)と西陣エリア。
自称・元敏腕宅配ドライバーとして、
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