グッドデザイン賞 西賀茂のいえ

グッドデザイン賞 西賀茂のいえ

認定を目標に事業展開をしたわけではないが、申請をする段階において資料作成など、自分たちの取り組みの原点を再確認したり、見直すよいきっかけになったのは間違いない。
そしてこの先、自社が進むべき方向性についても経営幹部・社員と共有する機会にもなった。
「これからの1000年を紡ぐ企業認定」においては、財団に提出する書類の作成で、自身の右腕となってくれた専務の働きが大きく、創一社長にとって大きな自信となった。

創業の原点を守りたい

町家の保全再生だけではない、自社の取り組みや事業の初発についてもあらためて紹介したい。
当社は現会長の吉田光一が今でいうバックパッカーとして海外をまわっていた時にイギリスのアパート専門の賃貸不動産屋さん(=フラットエージェンシー)に親切にしていただいたことが創業の動機であり社名の由来である。
留学生や外国人に優しい会社でありたいというのはまさしく創業の原点であり、今では英語・中国語・韓国語を話せる正社員を積極的に採用している。
シェアハウスの取り組みとしては、プライバシーを確保しながらお互いの顔が見える「温かい住まい方」の提案を強化。どんどんドライになる時代の流れに逆行しているのかもしれないが、それこそが私たちの使命ではないのか。それは父の創業の原点となった大家さんの温かさにも、京町家のまちなみ保全にも通じるフラットエージェンシーの思いである。
トンガリエステートという取り組みがある。名前の通りちょっと変わっていて尖がったユニークな特徴をもった物件ばかりを集めている。築年数は古いが好きな人には堪らない味のある建物、交通の便はよくないけれど静かな環境で落ち着いて暮らしたい方にお勧めの家。そこにはオーナー様のこだわりや思いが宿り、またそれを求めている人がどこかにいるはずなのである。
利益や効率だけを求めるのではなく、「人と家との出会い」を創造してゆくのも、フラットエージェンシーだからこそできる仕事だと思っている。

街の不動産屋さんにできること

「不動産会社」という響きについて考えることがある。一般の方が考える不動産会社はどことなく敷居が高くて、とっつきにくいのではないだろうか。たしかに扱っている「物」は土地であったり家屋であったりするのであるが、当社は創業時から一貫してそこで暮らす、あるいは働く人に焦点を当ててきた。
そして近年は1軒の家や店から町へと、人や家族からコミュニティへと「点と線」が拡がってきている。

地域の交流拠点となったTAMARIBA

地域の交流拠点となったTAMARIBA

4年前に本社近くに開業した地域の交流サロンといえるTAMARIBA(たまりば)は界隈の方々の「交流の場」である。特にカフェ風良都(ふらっと)の奥に併設した多目的スペース・ギャラリーは無料開放していることもあり、作品展や教室など地域の方の学びや集いの場として活用していただいている。
ここで新たに出会った人同士が友だちになったり、新しい活動を始めたり…、そんな話を聞くたびに嬉しくなる。

人気のシフォンケーキ

人気のシフォンケーキ

新大宮商店街をはじめとする商店街の支援もそんな取り組みの一つである。子どもの頃は賑わっていた商店街にいつからか空き店舗が目立つようになった。大型店へクルマで行ってまとめ買いをする世の中の流れは変えられない。でもこの地域の人の流れなら少しは変えられるかもしれない。
この取り組みに情熱を注いでくれる社員に恵まれた。シャッターが下りている店を一軒一軒訪ね、店主に安価で店を貸してもらえないかと頼んで歩いてくれた。
最初はほとんど門前払いであったという。それでも1つ、2つ、3つと商店街内に借店舗で新規開店した実績がでてくると、話を聞いてくださるようになってきた。今では新大宮商店街内に元気印の20軒が誕生した。
家賃収入は安くても空いている店舗を有効利用できることはオーナーさんにとってもプラスであるはずだが、そこで起業できる新しい若い店主がチャレンジできるチャンスを作れていることもこの取り組みを続けている動機になっている。
そして何より商店街に活気が戻り、街が明るくなってきていることは「不動産会社」という殻を打ち破れるという自信にも繋がっている。

 

社長の成長と社員の成長

まだ3年されど3年。まだ41歳それでも41歳。社長に就任してのこの3年間、自分の力だけではできないこと、どうにもならない場面もたくさん経験してきた。自身がもっと成長しなければならないのはもちろんだが、社員みんなが成長することが会社をより強くすることができると思うようになった。
1人の100歩より、100人の1歩が会社を動かす原動力。
自身を優柔不断かなと思うこともあるが、決めたことは勇断実行、覚悟を決めてやってきたつもりである。自分が「こうだ」と確信できないと動けないのは当たり前だと思う。社長が面白いと思わない事業が成功するわけがないし、社長が成功イメージを持てない事業に手を伸ばすことができないのであるから。
だからこそ社長である自分の判断材料となる知識や経験は研鑽しなければならない。社長になって今まで以上に早起きになって読書量が増えた。
より活発にいろいろな立場や業界の人と交わる努力も続けている。所属している京都商工会議所青年部(YEG)のメンバーの内装屋さんと協業する話を進めている。この会で出会った人や経験は公私の垣根を超えて自身の財産となっている。
会社のマネージメント、社員のモチベーションや空気づくりもYEGで部会長を務めた時の経験が活きている。
いくつかの名誉ある認定や賞をいただくようになったが、その意味を社員が深く考え、自分たちの仕事を誇れるようにしていくことも社長の務めであると深く感じている。

感謝と覚悟

多くのことを語ってくれた吉田創一社長は最後にたくさんの方への感謝の言葉で締め括った。
創業以来43年間、フラットエージェンシーに大切な資産の管理をお任せいただいたオーナーの皆様のおかげで今の会社があります。これからも共々に地域を盛り上げ発展してゆきたいと思いますと。
社員のみなさんとの双方向のコミュニケーションを大切に、自分の行き届かないところをフォローしてもらっていること、また部署ごとに優秀な社員が責任をもって事業を推進してくれていることへの感謝と、これからこの会社の使命はますます大きくなるという覚悟を胸にいだいている。
社長である自分の言うことに社員のみなさんは賛同してくれているのか、それでよいと思ってくれているのか不安になることもあると聞きましたが、「社長はアクティブリスニング(社員の声を傾聴)できていますよ」「社長は話しやすいし相談ごとで『後にしてくれ』と言われたことがない」という肯定的な声が多かったことを付け加えておきたい。
最後に…「会社を興して43年、二人三脚で会社の隆運に汗を流している父と母のおもいと、社員の皆さんのおもいに感謝し、しっかりと繋いでゆきたいと思います」と。(大学を卒業して就職するときの「残り5%」の含みの答えがここにあったのでは)
「京都を関西で一番住みよい街にしたい」その力強い言葉で吉田創一社長はインタビュートークを結んだ。

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