第三章では人々の恐れから妖が誕生し、人々に受け入れられていく過程が紹介されました。

「酒呑童子絵巻 上巻」(日本の鬼の交流博物館)
源頼光とその四天王らが鬼の頭領である「酒吞童子」を退治する物語です。18~19世紀に制作されたもので、酒吞童子討伐に向かう前の頼光一行が軍議を行っている場面が描かれています。

「餓鬼草紙(複製)」(龍谷大学大宮図書館)
出産時に産婦に近づいていく餓鬼が描かれています。死を恐れる象徴として餓鬼が描かれていると考えられます。

「源頼光公館土蜘蛛作妖怪図」(京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム)
江戸時代後期に歌川国芳が作成した三枚続の錦絵で、病床の源頼光と囲碁を打つ四天王が描かれています。天保の改革の諷刺画といわれており、四天王の背後の様々な妖怪は禁止令や節約令の象徴です。

「月刊漫画 ガロ 第一九号」(京都精華大学国際マンガ研究センター/京都国際マンガミュージアム)
水木しげるの代表作「ゲゲゲの鬼太郎」が表紙に描かれています。大衆向けで残酷な描写も少ない作品でアニメやグッズ化もされ、商業的娯楽としての妖怪像が生み出されました。
 

四.祈(いのり)

第四章では祇園祭や追儺式、鐘馗、建物の火除の意匠など人々が厄災を払うために神仏に祈りを捧げてきた様子が紹介されました。

「一行書『祇園牛頭天皇』」(長刀鉾保存会)
祇園牛頭天皇の神号が書かれた掛軸で、長刀鉾保存会のご神体とされているものです。長刀鉾の生稚児に選ばれた稚児家で祀られます。

「祇園社大政所図」(長刀鉾保存会)
祇園祭で大宮神輿・八王子神輿が大政所御旅所へ渡御する様子と、悪王子社で長刀が人々に手渡される様子が描かれている絵図です。祇園会の古い姿を今に伝えている可能性がある資料です。

「一文牛」(丹嘉)
疱瘡除けとして作られた牛の形の伏見人形です。牛は草を食べるため、疱瘡のカサブタ(=くさ)を牛が食べて早く治るようにという願いが込められています。腹部に穴が開いていて、そこに米を三粒入れて川へ流すと疱瘡除けのまじないになると信じられていました。

「方相氏面」(追儺保存会)
吉田神社の追儺式で使用されているものです。方相氏は黄金四目の仮面をつけ、右手に戈と左手に楯を持って悪鬼を追い払います。

「鐘馗像」(浅田製瓦工場)
中国の玄宗皇帝の故事から広まった鐘馗ですが、京都では瓦屋根の上に鐘馗像が設置され魔除けとされました。鐘馗像は恐ろしい顔に髭を生やし、刀を携えた大男の姿をしています。

 

パネル展 龍大とわざわい

龍谷大学 本館

龍谷大学 本館

重要文化財である龍谷大学本館ではパネル展「龍大とわざわい」が行われました。約380年にわたる龍谷大学の歴史の中で、降りかかってきた「わざわい」に注目するとともにそれらに向き合ってきた学生たちの様子が紹介されました。また、学生による紙芝居「お岩しぐれ」の上演も好評でした。
 

十二月展を観覧して

念願の十二月展を観るため龍谷ミュージアムに訪れると、スーツを着た学生がホテルマンのような立ち居振る舞いで来場者の案内をしていました。エレベーターを使おうとする来場者を見つけるとボタンを押しに走ったり、名前を記入する際にペンをさっと出してくれたりとかなり気合の入った素晴らしい接客です。これは強制ではなく、各人の心がけでやっているとのことでした。
展示会場も本格的で、学生が作ったものだと知っていなければ分からないほどでした。パネルのシールがちょっとよれているのが唯一気になったくらいでしょうか。案内をしてくれていた学生さんに聞いてみたら「それ何回直してもそうなるんですよ~」と四苦八苦しているようでした。とても興味深い展覧会になっており、楽しんで回りました。一貫したテーマに基づいた展示ではあるのですが、全ての展示品に学生それぞれの個性や想いが出ているようです。
 

担当の先生からひとこと

博物館実習を担当する先生方からのお話をご紹介します。

神田先生「十二月展の内容は年々濃くなっていて、たとえばYoutubeなどでPRする「動画班」は2021年に発足しました。『今までの十二月展に恥ずかしくないものにしよう。昨年に並ぶ、もしくは超えるものにしよう。』と学生が頑張って毎年良い展示を作る努力をしています。
4回生で行う授業のため、卒業論文や就職活動と重なって大変なスケジュールではあるのですが、来年からやめたらどうかという声は不思議と出ていないんです。学生自身がやりたいと思ってくれているんですね。」

吉村先生「卒業後の学生も、同窓会のように十二月展で集まってくれているようです。アンケートですごい長文批評を書いていくのは大体OBです(笑)」
 

おわりに

2022年を見逃した方はぜひ2023年の十二月展にご来場ください!これからも続いていく展覧会をぜひ応援してくださいね。わたしは取材を通して、この十二月展が京都の守るべき文化の一つであると強く感じました!

参考文献
2022年度 龍谷大学文学部博物館実習十二月展パンフレット
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