卸売業店舗 (於:株式会社和蘭)

卸売業店舗 (於:株式会社和蘭)

こうして、原料屋さんから仕入れた土で作陶し、卸売業から出荷…まちをぐるりと一周すると、京焼・清水焼が出来上がって全国へ発送できるという仕組みに造り上げられたまち、それが清水焼の郷・清水焼団地です。

最先端技術 ファインセラミックス

陶磁器というと食器や花瓶などの普段に使うものや、オブジェといったアート作品といったイメージが強いと思いますが、この清水焼団地ではファインセラミックスといわれる工業用磁器の製造をされている工場もあります。

工業用磁器の一例 (於:西村陶業株式会社)

工業用磁器の一例 (於:西村陶業株式会社)

ファインセラミックスの原料は精製されたアルミナ(酸化アルミニウム)やジルコニアなどを主に使用。
その製品の特徴は、
・電気を通さない「絶縁性」…電柱に付いている碍子など
・熱に強い「耐熱性」…高輝度照明など
・キズが付きにくい「耐摩耗性」…下水道用の粉砕機など
その他、
・加熱後膨張しにくい
・原料の配合により熱伝導率の調整が可能
・薬品に強い
といった特性があり、血液の成分検査に使う部品にも、余計な成分を検知させないことからセラミックスが選ばれているなど、やきものだからこそのクオリティを生かし、金属やその他素材では賄えない場所に使われています。
また、半導体を製造する機械にもセラミックスは不可欠だそうで、これから益々成長していくと思われる分野です。

成形の方法は一般的な作陶とは異なり、原料はきめ細かく砕かれ、乾燥したものを、圧力をかけて形づくる「加圧成形」や、水分を加えて金型を通して成形する「押出成形」、原料に樹脂を混ぜて型に充填する「射出成形」などで形づくられます。
一方、焼成は食器などと同じく、ガス窯や電気窯で焼かれますが、中には1600℃という高温で焼かれる製品も。焼いている最中に確認すると、もはや赤ではなく、白く輝いてみえるんだそう。
焼き上がった製品は研磨や組み立て、そして厳しい品質検査を経て出荷され、精密機器を支えています。

こうした、やきもの伝統的な技から、最先端の技術まで幅広い分野が同じまちにあるのも、清水焼の郷・清水焼団地の魅力だと考えます。

⚫︎参考文献
・清水焼団地協同組合. (2011). 清水焼団地五十年の歩み

記事の内容について清水焼団地協同組合の多大なるご協力を賜りました。

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この記事を書いたKLKライター

おきにのうつわ
食空間コーディネーター 工芸品ディレクター
三谷 靖代

京都生まれ。祖父の代まで染屋を営み、親戚一同“糸へん”の仕事にたずさわる環境で育ち、学生時代はファッションを学び、ウェディング業界へ就職。そこで出会ったテーブルコーディネートに感銘を受け、後に食空間コーディネーターとして起業。京都の伝統産業の産地支援や、五節句や年中行事など生活文化を次世代に伝える活動を行っています。京焼・清水焼の卸売をする夫と夫婦ユニット「おきにのうつわ」を結成して、京焼・清水焼の魅力の発信や講演、展示会プロデュース、また陶磁器以外の伝統産業品のPRや観光業とのコラボなども手がけています。近年スタートさせた「伝活」では実際に京都の伝統産業品を愛でたり、使っている様子をSNSで紹介。
特非)五節句文化アカデミア 理事

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京都生まれ。祖父の代まで染屋を営み、親戚一同“糸へん”の仕事にたずさわる環境で育ち、学生時代はファッションを学び、ウェディング業界へ就職。そこで出会ったテーブルコーディネートに感銘を受け、後に食空間コーディネーターとして起業。京都の伝統産業の産地支援や、五節句や年中行事など生活文化を次世代に伝える活動を行っています。京焼・清水焼の卸売をする夫と夫婦ユニット「おきにのうつわ」を結成して、京焼・清水焼の魅力の発信や講演、展示会プロデュース、また陶磁器以外の伝統産業品のPRや観光業とのコラボなども手がけています。近年スタートさせた「伝活」では実際に京都の伝統産業品を愛でたり、使っている様子をSNSで紹介。
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