竹林の小径、行ってみた!そう、行ってきたんです、嵐山に。右手に一眼レフカメラを持ち、左手はスマホのマップで位置を確かめながら。

 夕暮れの五重の塔と同じくらいの頻度でテレビに映る「細い道の両側にある低い竹枝垣と竹林」。これを見ると、テロップがなくても、その場面から京都のシーンに入ったことがわかります。
 前回、「京都らしい、ってなんだろう」と書きました。それならば、その京都らしい場所、あの竹林に一度は行ってみねばなるまい!竹屋としては。

竹林

竹林

 嵐電を降り、起点となる野宮神社にまずは向ってみました。外国語や関東語を話す沢山の人の中に溶け込んで竹林を歩きながら、プロの竹屋としては竹の種類に関心がいきます。
 孟宗竹(モウソウチク)と真竹(マダケ)。
 前回で少し触れた、品種が違うこれら2つのタケ。その見分け方は、節のカタチ。“一重の節”が孟宗、“二重の節”が真竹。もし竹を触る機会があれば、節の上を指で撫でてみてください。指先に引っかかるのが孟宗竹。
 ただし、勝手に他人の竹藪に侵入すると、、、怒られます。

モウソウの節

モウソウの節

マダケの節

マダケの節

 そして、もう一つ見ているのは、竹の色。竹の色は緑色。ではあるけれど、色々なトーンの緑色が入り混じっています。
竹の生長の早さ。前回も書いたのですが、<筍が出て、2~3ヶ月で生長を終え、その後は大きさが変わることがない。>
木は毎年太るため年輪で年齢が判別できますが、竹は切ってみても年輪らしきものが、ありません。
 では、どうして竹の年齢を見分けるのでしょうか?第一の見方は、枝の先を見る事。竹は、毎年、葉変わりするので、1年経てば小枝が落ち、次の年の枝が出て、これを繰り返します。枝の落ちた跡を数えれば、何年目の竹なのかが判明します。
 ただ、竹屋はそんな面倒なことをしませ~ん。主に見るのは、竹の色の違い。柔らかくて使うには早すぎる1年目の竹は、新鮮な緑。程よく硬くなり、伐採に適した3~5年頃の竹は精悍な緑となり、6年を経過した頃からは黄色がかり、くすみの入った緑。
『日本の伝統色』の中には、竹にまつわる色が18色以上あるそうで、緑系なら「若竹色」「青竹色」「老竹色」。竹林を歩くと判る色の違い。若・成・老の色の違い捉えています。竹だけに限らず、草や花など植物に由来する色が、沢山あります。
 これらの微妙なトーンを比べるときに、日本人が自然を見つめる目、四季を感じ取る感覚の繊細さに驚かされます。そして京都は、桜・紅葉・青竹・山・川、自然の色が千年前と変わらず折々に映え続けているから、美的な感性を積み上げてきたのだろうな、とも思います。

竹の色

竹の色

 ゆっくり歩くうちに天竜寺北門辺り。そこを超えた途端、「ヴっァほぉ」と、息なのか声なのかわからないサウンドを口から発してしまいました。上り坂になる小径に沿って空まで届いているかのようなタケ・たけ・竹。
異次元空間!荘厳、って言葉はこういうことなのかぁ??!沢山の人が居るのに、なぜか静寂?この凛とした空気感は、竹のシンプルで清楚な佇まいから感じられるのかぁ?まっすぐに伸びる竹に高さを判らなくさせられ、緑の濃淡がに奥行を判らなくさせられ。まるでVRの中に居るような感覚。
すごくカッコいい空間。見慣れた竹があるだけなのに見ごたえがあり、終点の大河内山荘まで、非日常の時間を、竹屋としては不覚にも味わってしまいました。

 外国語も関東語も「ヴっァほぉ」と言ったのかどうかは知りませんが、この空間に見とれているような気配。
竹は単にシンボル的なモノだけであるかもしれないけれど、竹を通して、日本の精神性を感じているのかな?自然を感じ取る感性が創った日本の文化力を連想しているのかもしれない。やはり、カッコいいものは、カッコいい。そこには西洋も東洋も関係がない気がする。これこそが、クール・ジャパン、なのでは?

 帰り際。すれ違ったレベッカ・ファガーソン似の女性の声が背後から聞こえてきました。 “ア~ィ・ルァ~~~ヴ・バンブ~~~”と。竹屋の主人に言ったものでないことは確かだけれど、不意打ちで、それも休日に、ここで聞いてしまった。「竹、好きなんですぅ」を。
 
ただし、今なら、こう答えます。 “Me Too!”


-------------------------(photo by Yu-ki.K)---------------------------

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利田 淳司

銘竹問屋四代目・ギタリスト
利田 淳司(かがた じゅんじ)
◎1967年京都市生まれ。関西学院大学法学部卒。1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

                                   

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