プロフィールに記載している『ギタリスト』。自称です。それが生業とできるだけの技量など決してなく、音感も何もないまま、ギターが好なだけを取り得に、ここ10数年、バンド活動を単純に楽しんでいる全くの素人ギタリスト。ただ、四六時中ギターの事を考えているという限りにおいては、ギタリストと標榜しても許される、かも。
 
と、語弊を解いた上で、さて本題に。

竹のギター?

竹製のギター

竹製のギター

僕はギタリストであると同時に竹屋でもあるので、竹製のギターを持っています。
ヤマハという品質の高いギターを作るメーカーが20年程前に製造し、すぐにカタログから消えたアコースティックギター。そのボディに竹(の集成材)が使われているという代物です。通常はスプルース等の木材が使われるのですが、竹の持つ音響特性が異なるらしく、ギターを竹で作る事には価値がある、というような経緯で開発された、と発売当時に聞いた記憶があります。

弾いてみると…さして、なにか特別な音であるわけでもなく…特に良い見た目である訳でもなく…“澄んだ音”という感想を聞いた事もありますが、竹のイメージからくる錯覚であるような…やっぱりギターは木のほうが、カッコいい…かな。

竹屋なので竹のギターはマストアイテム!と予約までして買ったものの、とある事故で折れたネックを自力で接着した状態であるうえに、僕の専門はエレクトリックギターであり、騒々しいめの音が好みなので、さしたる出番もないままに、もはや事務所のインテリアとなっています。

ギターを弾くコツは…

エレクトリックギターの弦は案外に細いもので、チョーキングという音程を変えるワザ《ライブビデオなどで、ギタリストが悦に浸りながらキュイーンと弦を持ち上げているアレ!です。》など駆使すると、すぐに弦が切れます。スタジオに居る2時間程の間に、2回も弦を切ったことさえありました。力を入れると、すぐに弦が切れてしまいます。

切りすぎです。巧い人は、チョーキングをしようがコード弾きしようが、そんなに弦は切らない、と聞きます。
何事にしても不器用な僕は、余分な力を入れすぎなのです。
『力を抜く』事が僕のギタリストとしての課題。

 力を入れて弾く、という事は、迫力のある音が出る、などという事には決してならず、左手で制御すべき音の動きは固くなるわ、右手で制御すべきリズムはぎこちなくなるわ、弦が振動しなく音は詰まるわ、全く良い所ナシ。
左手で軽く押さえ、右手を軽く振るからこそ聞いていて心地よい音楽になります。

竹を切るコツは…

 ギタリストであると同時に竹屋でもある僕は、そんなことを考えながら、いつも竹を切っています。伐採するという意味の“切る”ではなく、4mの竹を3mにカットするという意味での“切る”です。

竹を綺麗に切るには、ワザが要ります。というのは、竹の表皮は扱いが難しく、普通の鋸で一気にズバット切ろうとすると、ギザギザにささくれます。
プロは竹専用の鋸を使います。糸鋸に似た形をしているのですが、違いは鋸歯。目が細かく、おまけに歯の向きが木材用とは逆の目。
 「鋸をひく」というように、鋸は引いて切るものなのですが、竹の鋸切は押して切る「押し切り」用に作られています。なので、鋸歯の目が逆。

 そして、ここからが大事。竹は、「回し切り」という切り方をします。切り台にのせた竹を左手でつかみ、右手に鋸を持ち、竹を回転させながら、まず表皮のみを切ります。

竹鋸

竹鋸

 竹が一周すると、切目はきちんと繋がります。ここがプロのワザです。(と言っても、技!と書くほどの大層なことでもないので片仮名ワザ。)竹を目分量で回すのですが、少しでもずれて回したり、僅かでも鋸がぶれると繋がらず、螺旋になってしまいます。

回し切り

回し切り

竹の表皮を切った後は、さらに繋がった線をなぞりながら鋸を軽く動かし、何回転かするうちに徐々に竹の身(竹の内側)に鋸が沈んでゆき、空洞まで達すると切り落とすことができます。

コツは、鋸が自重で立つ程度に竹の上に置き、右手に力を入れず前後に動かし、そのリズムに合わせて、左手を軽く回す。
ここで力が入ると、切り目は繋がらないわ、表面はささくれるわ、断面はズタズタになるわ、全く良い所ナシ。
《どこかで聞いたフレーズがデジャブで現れました。そろそろ、今回のオチです。》


ギターを弾くには、力を抜くこと。
竹を切るには、力を抜くこと。

人生も、また然り?

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この記事を書いたKLKライター

銘竹問屋四代目・ギタリスト
利田 淳司

 
1967年京都市生まれ。
関西学院大学法学部卒。
1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

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利田 淳司

 
1967年京都市生まれ。
関西学院大学法学部卒。
1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

|銘竹問屋四代目・ギタリスト|竹/明智藪/嵐山/祇園祭/ギター

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