今さら聞けない鉾と神輿の関係って? 【祇園祭は疫病に負けたのか】
本稿は2020年7月に掲載された記事です。より詳しく深い話を読まれたい方は、最新記事の
「山鉾と神輿の意味って知ってますか?今さら聞けない祇園祭の素朴なギモン」をご覧ください。下の神輿の写真よりリンクできます。
おひねり
頭にキリリと巻かれた手ぬぐいにかざす「おひねり」。法被姿がいちだんとイナセに見えますね。このおひねりをタンスに入れておくと、着物が1枚増えるという言いつたえがあり、花街の人にお渡しすると喜ばれます。
手ぬぐい安産
先ほどの手ぬぐいを洗わずに、そのまま妊婦の腹帯に入れると安産になるといわれています。ウソかホントか、逆子で帝王切開を覚悟していた臨月の妊婦さんに手ぬぐいを差しあげたところ、逆子がなおり安産で元気な赤ちゃんが生まれたとか。
祇園祭は疫病に負けたのか?
さて、祇園祭は疫病退散がその起源であったのはご存知の通りです。なのに、今年はコロナという疫病のために山鉾巡行も神輿渡御も中止となりました。「これってどうなの?」とギモンに思われた方も多いでしょう。私自身も最初は「3密を考えたら仕方ないけれど、でもなあ…」という気持ちでした。でも今は、このように考えています。神様が次の3つを考えるための機会を与えられたのだと。
一、祇園祭は確かに「お祭り」として多くの方を魅了します。でもやはり「祇園祭は何のためにやっているの?」という本質は大事。この本義をしっかりと見つめ直すこと。
一、神輿に携わる者は祇園祭にご奉仕することを誇りに思っています。でもご奉仕できるのも、日々の生活があってのこと。平和な社会、仕事や家庭が順調であること…人それぞれの毎日がきちんと成り立っていてこその祇園祭。今回のコロナ禍で何気ない日常のありがたみを身にしみて感じました。社会、そして自分を支えてくれている色いろな人たちのありがたみも。その感謝の気持ちを今一度しっかりと心に刻むこと。
一、自分を省みることの大切さ。スサノオミコトは荒ぶる神様であり、もともとは厄神であったともいわれています。つまり良い神様と悪い神様の両面を持っておられるワケです。私たちが善い行いをしていれば良い神様であられるし、悪いことをしていると災いの神様となられる。人間、誰しもいつも善行ばかり積めるものではありません。ときには気がゆるみ邪な心を持つこともあるでしょう。軽々しく言ってはいけないことは承知のうえで書きますが、コロナ禍とはそんな私たちを戒めるための神様の思し召しなのかもしれません。
「祇園祭は疫病に負けたのか?」という問いへの答えには、なっていないかもしれませんが、私はこのように考えようとしています。そして感謝の心と祇園祭の本義をしっかりと携えて明年、絢爛豪華な山鉾と賑々しい神輿ぶりを魅せてくれる祇園祭にご奉仕できることを心待ちにしています。
(編集部/吉川哲史)
祇園祭温故知新/淡交社 (監修 京都市文化市民局 文化財保護課)
祇園祭のひみつ/白川書院
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祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。
日本語検定一級、漢検(日本漢字能力検定)準一級を
取得した目的は、難解な都市・京都を
わかりやすく伝えるためだとか。
地元広告代理店での勤務経験を活かし、
JR東海ツアーの観光ガイドや同志社大学イベント講座、
企業向けの広告講座や「ひみつの京都案内」
などのゲスト講師に招かれることも。
得意ジャンルは歴史(特に戦国時代)と西陣エリア。
自称・元敏腕宅配ドライバーとして、
上京区の大路小路を知り尽くす。
夏になると祇園祭に想いを馳せるとともに、
祭の深奥さに迷宮をさまようのが恒例。
著書
「西陣がわかれば日本がわかる」
「戦国時代がわかれば京都がわかる」
サンケイデザイン㈱専務取締役
|八坂神社中御座 三若神輿会 幹事 / (一社)日本ペンクラブ会員|戦国/西陣/祇園祭/紅葉/パン/スタバ
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神輿の上に飾られた鳳凰に供えられているのがお稲です。ネギではありません(念のため)。