「竹屋」四代目の利田さん。ちょっと珍しい職業、竹屋さんの職業観。

竹ってそもそも誰が買いに来るんですか(笑)?

 昔は和風建築、注文住宅が主流だったので家を建てる時に建材の一部として売れました。
でも今はそういう家が少なくなってきて、逆にホテルやインテリアデコレーションの分野では、これまで以上に使われているように思います。。

若い建築家やデザイナーが「竹ってcoolだよね(かっこいいよね)」と目をつけて問い合わせをしてくれることが多いですね。

竹の種類をひとつひとつ解説してくれた。

 でも家の外装やお店のインテリアに「竹を使いたい」と思っても、具体的にどんな風に竹をあしらったらよいのか、またどんな竹の種類があるのかがみんなわからないようなのです。

そこで竹平商店のホームページは竹を使った建築や竹で作った工芸品など「竹の使いみち」を提案するページと、そこで興味を持って「じゃあどんな竹素材があるの?」と思った人が見る竹のカタログページに分けています。

竹を使いたいと思っても建築系の本にも竹の使い方やどこに注文するのかなんて載っていませんからね。

店内にずらりと並ぶ竹・竹・竹。

サイトを開設したのは1996年と、まだインターネットが世に広まる前だったと思います。

MS-DOSの時代にみようみまねで経理ソフトを作ったことはあるものの、通信はしたこともなく、ネットが到来して、これもみようみまねでホームページというものを自分で作ってみました。
当初はアメリカの竹好きに向けて作ったようなサイトだったのですが、商売にはまったくつながりませんでした(笑)。

ただそのサイトを見たアメリカ人に誘われて竹協会に入って海外との繋がりも広がったのも事実です。

今のサイトは2代目で、もう完全に若い感性の建築家・デザイナーに向けで、漠然と竹を使いたいと感じる人への道しるべです。

おかげでほとんど毎日なんらかの引き合いをいただいています。ネットから始まり、受注して、発送して。ある意味では、Amazonと同じようなことなのかも。
宅配便ではないですが4mある竹でも発送できるんですよ。

4〜5mもある竹をひょいと担いで、道路を横断する利田さん

サイトを開設した当時とは違って今は竹を買いにくる外国人も多いのですね?

最近の若いデザイナーや建築家の感性は結局のところ外国人の感性と同じところがあって。ちょっと違った素材を使ってみたいとか。そんなことを海外の建築家たちも考えているんですね。

そんな時に日本では伝統建材の竹が、外国人にはモダンに映るのです。
建物のファサードやインテリアへの竹の使い方、あしらい方はだいたい日本の建築家と同じですね。

突飛おしもないような使い方はあまりないです。それをやってしまうとアジアンテイストのエスニックレストランみたいになってしまいますから(笑)。


たまたま自分が行ったbarが竹の網代の天井だったり、サイトで見つけた建具が葦障子(竹の簾を組み込んだような夏用の障子)であったり。ワオ!アメージング!みたいな(笑)。
そこで、竹という素材を使ってみたい、という気持ちになっていかれるのだと思いますよ。

竹協会のおかげもあってか、海外から竹を探して「日本にJunjiがいるよ」と伝手をたどってきてくれるお客さんもいます。
また、サイトを切っ掛けに東京の大手設計事務所や海外の設計事務所からも引き合いをいただきます。

銘竹問屋・竹平|京都の銘竹・竹材・煤竹
様々な竹のカタチや竹のデザインなど、京都の銘竹を紹介~数寄屋建築材料・店舗内装建築材料・竹工芸材料など銘竹・竹材の老舗・京都竹平のサイト。煤竹工芸や竹籠など日本の竹の文化を紹介。

日本で竹が再び注目されたのは何がきっかけなのでしょうか?

 90年代後半にウィンドウズやインターネットが普及し、ユニクロで消費の価値観が変わったのではないでしょうか。

その反面として、自分が気に入った、質の良いものを大切にしたい、という
気持ちも現れ、その中の一つに竹もあるのでは?

竹で作られた工芸品。

ところで稼業を継ごうと決めたのは?

大学の終わりごろかな。結局は継ぐことになるんやろな…とは思っていましたが。

竹屋の将来についてはけっこう展望を持っていました。
僕が学生の頃でもたまに外国人がふらっと店を覗いて物珍しそうに竹を見ていましたから。

当時に想いを馳せる利田さん。

 大学をでてすぐに店に入ったのでよそに勤めた経験はないのですが、学生時代に戻って「もしも」があるならば、デザイナー、それもプロダクトデザインをやってみたいなと思いますね。

竹を素材として提供する側で仕事をしているので、その素材を選んでものを生み出す側に立ってみたいということでしょうか。

 
ところで僕は「銘竹」って言葉を気に入っているのですが、これは初代の曽祖父の造語です。「銘木屋があるんだから銘竹屋があってもいいんじゃないか」と。

 

竹屋を究めるためにやっていることは?

やっぱギターかな(笑)。
仕事とは全く関係のない事に夢中になる時間があることが、仕事にもフィードバックされてるように思いますよ。

それからいまは茶室の勉強をしています。
3年ほど前から、茶室建築に特化した講座に通っているのですが、若いころわからなかったこと、自信をもって言えなかったことが言えるようになった。

茶道でないところがミソ

本棚に茶室や桂離宮の本がずらり。
その下段には、なぜか仮面ライダーのフィギュアと音楽の本が。

ちょっときれいにまとまりすぎなので人間臭い話はないですか?

「買ってやろう」という客にはこちらも「売ってあげよう」というスタンスで臨んでいます。竹屋の矜持でしょうか。

人間臭いかどうかわかりませんが、こんな仕事をしているとやっぱりよくケガをします。

竹のソゲが刺さったり、指先を切ったりはいつものことです。
刺さったソゲはこのナイフで自分で応急処置してしてしまいます。

いつもソゲ(とげ、ささくれ)を取っている愛用のナイフ

あとは、ベルトサンダーという研磨機があるのですが、こいつがひっかかって、手が研磨されちゃって…。
流石にその日に、近くの病院に行ったら、どうして怪我したのか説明するじゃないですか。まずベルトサンダーの説明からしなきゃいけないんです。

病院に行くたびに、毎回、その日の担当のお医者さんからも「ベルトサンダーってどんな機械ですか?」と興味津々で聞かれました。(笑)

「毎日のように怪我をする」

竹屋さん実演!職人芸の数々

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この記事を書いたライター

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