編集部が掲げる「第6」の仮説

ここまでの5説は一般的によくいわれている通説であり、これで話が終わったら、ただのまとめサイトです。そんなことでは「ガイドブックより一歩踏みこんだ奥深き京都を探る」を理念に掲げる当サイト「Kyoto Love.Kyoto」の看板を降ろさねばなりません。

そこで、私なりにアンパンかじりながら考えてたどり着いた第6の説を発表します。これは今のところ誰も唱えていないし、どのサイトにもどの本にも載ってないはずです(たぶん、きっと)。ヒントは秒殺で却下したアンパン説にありました。

それでは発表します。

編集部オリジナル説
「和菓子作りに込められた創作精神がパン職人に受け継がれたから」説です。ウダウダと長くてわかりにくい説ですね。順を追って説明します。

まずはこちらのデータをご覧ください。先ほどはパン全般での消費ランキングをご紹介しましたが、今度はパンの種類ごとに分けてみました。まずは「食パン部門」です。

ベストテンには入っているものの、決して上位ともいえないですよね。
では次にお惣菜パン部門を見てみましょう。

なんと38位!ベストテンどころかワースト10に入ってしまっています。こんなんでどうやって総合2位にランクインしたのでしょうか。答えはココにありました。

菓子パン部門では堂々の1位に輝いていました。つまり京都のパン文化を支えているのは菓子パンだったわけです。そして菓子パンと京都をつなげているのは、和菓子づくりのココロではないか、というのが編集部の仮説です。和菓子と茶道には密接な関係があり、京都は茶道お家元の街だけあって和菓子文化が盛んです。なので茶の湯が確立した室町時代より、多くの職人さんたちが競って新たなる味を追究してきました。

どんな料理でもそうですが、和菓子はとくにその創造性が問われるジャンルです。さらに茶道の一期一会の精神が反映され、1つの和菓子を創ることは職人にとって人生を懸けるに等しい真剣勝負だったのではないでしょうか。その気風と文化が京都に根づき、西洋文化であるパンが輸入されたとき、パン職人にも受け継がれたのだと思います。そうした脈々と連なる職人魂によって数多くの個性的な菓子パンが生まれ、京都人のパン食につながった。これが編集部が掲げる第6の仮説「和菓子作りに込められた創作精神がパンに受け継がれたから」説です。いかがでしょうか。


パン食はもはや京都文化

近年はスイーツとしても注目を集めている菓子パン。和菓子というと、オトナのお菓子のイメージが強いですが、菓子パンは子どもから大人まで万人受けするのも人気の理由でしょう。

また、パンはお米以上に他の食材との相性が良いようです。好みは人それぞれだと思いますが、おはぎのようにお米とアンコは合っても、お米とホイップクリームやお米とフルーツのマリア―ジュは私的にはご遠慮申しあげたいと思います。その点、パンはアンコなど和菓子の材料とも、クリームやバターなど洋菓子の材料やフルーツとも相性の良い万能選手です。それだけに多くの職人さんの創意工夫と試行錯誤、そして熱意が注ぎこまれてきたのが菓子パンだといえます。

ちなみに、これまた意外なデータですが、コーヒーやバター、牛乳の消費ランキングでも京都は常に上位を占めています。これってみんなパンと一緒にテーブルに並ぶものですよね。パン好きだからコーヒーを飲むのか、コーヒーが好きだからパンを食べるのか。いずれにしてもパンは京都の食文化の中核、とまでは言いませんが少なくとも「大きな一角」を担っていると言えます。そこには500年以上にわたって受け継がれてきた職人たちの技と誇りが息づいていました。


朝の目覚めは一枚のパンから。
これが京都人スタイルどすえ。



(編集部/吉川哲史)

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この記事を書いたKLKライター

八坂神社中御座 三若神輿会 幹事 / (一社)日本ペンクラブ会員
吉川 哲史

祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。

日本語検定一級、漢検(日本漢字能力検定)準一級を
取得した目的は、難解な都市・京都を
わかりやすく伝えるためだとか。

地元広告代理店での勤務経験を活かし、
JR東海ツアーの観光ガイドや同志社大学イベント講座、
企業向けの広告講座や「ひみつの京都案内」
などのゲスト講師に招かれることも。

得意ジャンルは歴史(特に戦国時代)と西陣エリア。
自称・元敏腕宅配ドライバーとして、
上京区の大路小路を知り尽くす。
夏になると祇園祭に想いを馳せるとともに、
祭の深奥さに迷宮をさまようのが恒例。

著書
「西陣がわかれば日本がわかる」
「戦国時代がわかれば京都がわかる」

サンケイデザイン㈱専務取締役

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わかりやすく伝えるためだとか。

地元広告代理店での勤務経験を活かし、
JR東海ツアーの観光ガイドや同志社大学イベント講座、
企業向けの広告講座や「ひみつの京都案内」
などのゲスト講師に招かれることも。

得意ジャンルは歴史(特に戦国時代)と西陣エリア。
自称・元敏腕宅配ドライバーとして、
上京区の大路小路を知り尽くす。
夏になると祇園祭に想いを馳せるとともに、
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「西陣がわかれば日本がわかる」
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|八坂神社中御座 三若神輿会 幹事 / (一社)日本ペンクラブ会員|戦国/西陣/祇園祭/紅葉/パン/スタバ

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