そして最後の5つ目は秋のお祭りの多さです。秋はお米をはじめいろんな作物の収穫の時期なので、収穫祭が多いですよね。そしてやっぱりみんなはそれをお祝いするほうが嬉しいし美味しい。長寿も大事やけど、食べ物は生きていくための一番身近な問題ですしね。

こうやって見てくると、「菊」という花が持つ生態、イメージ、菊を使う理由が周知されんようになったこと、旧暦と新暦による季節感のズレ、秋のイベントやお祭りから押し出されてしまったことなど、さまざまな理由でマイナーな節句になっていったのは納得がいくような気がします。

 

重陽の節句よ、再び!

そしたら、「重陽の節句」行事は今後無くなっていくのでしょうか?このままいくと廃れてしまいそうな気はしますが、私はこの行事は是非是非残してほしいなと思っています。私自身も行事を一切やってなかった節句ですが、調べたら調べるほど面白く、菊の花のイメージも変わりました。

先ほど、「実際の菊の盛りは今の9月9日よりずっと後やけど、今はいつでも咲いてるし季節感が無くなった。」と書きましたよね。それが行われんようになった理由の1つやったわけですが、いつでも咲いているということは復活にとって逆に好都合とも言えます。割り切って新暦9月9日に使ってみたらどうですか?高齢者も多いし、健康志向もどんどん高くなって広まってきてます。おまけに行事はとっても雅です。京都人、京都通やったら是非挑戦していただきましょう。実際に行われ、体験もできるところがあるのでご紹介しますね。

私の住む上京区にある町家アートギャラリーのbe京都さんでは、多くの節句行事が行われ、一部の体験もできます。こちらでは重陽の節句も菊の花にまつわる行事やしつらいなどが、華道・嵯峨御流教授の石川利佳甫先生により古式にならい再現・指導されています。菊に被綿をする体験や菊酒・菊花茶の試飲もあったので、今年は行ってみよかと思ってるところです。

▲若い人たちに伝えられる「重陽の節句」

▲若い人たちに伝えられる「重陽の節句」

(写真提供:be京都様・2枚とも)

▲被綿で拭い、昔の行事を追体験。

▲被綿で拭い、昔の行事を追体験。

(写真提供:be京都様・2枚とも)

さぁ今までご紹介してきた行事の中で、どれやったらみなさんのお家でできるかしらんと。簡単にできるものを考えてみましょね。まずは食べたり飲んだりできるもの。栗ご飯は重陽の節句でなくても食べるけど、節句のご飯として広まってほしいですね。バレンタインのチョコ、端午の節句のちまき、重陽の節句の栗ご飯、そして飲み物は菊花茶や菊酒。お店の方、これいけそうですよ?!雅なイメージのお祭ができますし、私が気になっている美肌やアンチエイジングにもつながる行事は、今の若い人たちにも興味を引くのとちゃうかなと思うのです。

他に手っ取り早くするのやったら、重陽の節句をやったはる寺社をチェック。法輪寺さんや市比賣神社さんがおすすめですよ。他に京都にも、また京都やなくても調べたらたくさんあります。お守りをいただいたり、その場で菊酒を飲んでみたり。ちょっとしたお出かけでできる節句体験ですね。京都の人もこの手の関わり方が一番現実味がありますね。

そしてもっとアクティブに、9月9日がお休みの日にあたったら山にハイキング!茱萸袋は形だけでも再現したものを着けます。リュックに「茱萸袋ストラップ」つけてみますか?お山のてっぺんで菊酒飲んで、ということなのですが、ちょっとビックリしたのは、現代の中国では高い山の代わりにビルの上の階に行くこともあるっていうこと。最上階のレストランで菊酒なんか飲めたら素敵やわ~て思います。お家にいる人はおひなさんを飾り、白酒のかわりに菊酒で乾杯して、大人の「後の雛」を楽しみましょう!菊の花と一緒のおひなさまも趣がありそうです。1年に2回もおひなさまが使えてコスパも上がります!

そうそう、最近のお葬式は菊ばかりでなく、ひまわりのような派手な洋花や亡くなった方が好きやった花を飾ることも増えてきたそうです。お花に疎い私には気の付かへんポイントでしたが、それやったら菊もイメージを変えていけるかもしれません。菊の高貴イメージカムバック!菊の花に乗せる被綿も、その絵を飾ったりタペストリーにするのやったら場所を取らずできそうです。

また、京都らしく旧暦か月後れでする手もありますね。観菊祭もある季節に催したら昔の風情も味わえます。新旧の暦でやれば、七夕のように2回楽しめるメリットも。新暦のほうは、暑い暑い夏に耐えた身体を癒すイベントになりそうです。

何千年も昔からの行事が中国から渡り、確かに京都ではその行事が宮中で行われてました。菊の花のイメージや季節のずれから忘れ去られそうになっている重陽の節句ですが、雅でヘルシーで延命長寿な行事、やって損はありません!ついでに、ここ数年の大きな災難を除ける行事として付け加えましょう。京都人・京都通の必須のイベントとして、これを外すことはできひん、いつかそう言えるようになることを祈りつつ。

注)
1.古郷彰治「重陽」p.27 「季節を祝う 京の五節句」に収録
2.神泉苑サイト
3.猪熊兼樹「『旧儀礼図画帖』に見る宮廷の年中行事」p.53 「菊綿」
4.効能として利尿作用、抗菌作用、解熱効果、高血圧予防、夏バテ解消、のぼせ、慢性肝炎、眼精疲労、解毒、消炎が挙げられています。
わかさ生活サイト「わかさの秘密」
  5.菊にアレルギーを持っている方、冷え性や下痢をする方は控えた方がよいとされています。
茶卸総本舗ブログ
6.「飲菊酒食蒸栗或親戚朋友互贈」 黒川道友「日次紀事 九月十月」1676年(延享4年)
7.大橋弌峰ブログサイト
8.「茱萸袋」の「茱萸」とは、「山茱萸」と「呉茱萸」の2つの説がそれぞれ複数の資料で解説されており、こちらではこの2つのどちらかを取るという判別をしませんでした。

その他、陶淵明の菊の詩から名を取った京都市上京区の旅館「東籬」の女将・望月佐多子さんに中国における重陽の節句について教えていただきました。
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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
お申込みは「鳴橋庵」HPまで。

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