京都ロンドン花物語

ロンドンに暮らすとあまりに京都と似ているところが多くて驚く。
地下鉄の駅の間隔も無理なく歩ける距離で観光客が多く、治安が良いので公共機関でどこにでも移動が出来る。なにより路地裏に様々な歴史がある。

1980年代にロンドンのフラワースクールを卒業してそれから20数回英国を訪問するチャンスをいただいた。目的は英国のフラワースクールで学ぶことそれにガーデン訪問だ。その立場から両方の街で愛されている花の美しい場所をご紹介できたらと思う。

Sissinghurst white garden

京都と英国の春の色

まずは春。

日本の春の色は桜のピンクだ。渡英するまでそれは世界中の認識だと思っていた。しかし英国の春の色はハイドパークのダフデルの黄色。ラッパズイセンと呼ばれるこの花は世界中での野生の開花面積の一番広い花だ。芝生の横に咲き乱れるこの花を見ながらベンチに座ると暗くて長い冬が終わったのだと実感できる。郊外にもダフデルがきれいなところはいろいろあったがあのスケールとロケーションを考えるとハイドパークのダフデルがやはり最高だ。

原谷苑のしだれ桜

京都で一番好きな桜は原谷苑のしだれ桜。あの桜を見る度に梶井基次郎の短編小説「櫻の樹の下には」を思い出すのは私だけではないだろう。英国にも桜が無いわけではない。6月くらいまで風が吹いても雨が降っても散ることもなくしっかりと咲き続ける。[サージェントチェリー](オオヤマザクラ)が多いようだ。英国人が憧れる日本の桜がは一瞬で散ってしまうはかなさのようだ。

Sissinghurst white garden

 

包容力のあるイギリスの藤

次は藤。

藤の花は日本的な印象が強かったが英国の庭には様々な場所で愛されていた。
コッツウォルズのヒドコートマナーガーデンの真っ白の藤は驚く大きさだった。花の下のベンチで下から見上げた藤はまるで私を包み込んでくれるような不思議な包容力があった。

平安神宮の藤

京都の藤は幼い頃平安神宮で見た藤の美しさ、幽玄な怪しさを子供心に確かに感じていた。今もその感動がずっと残っていて藤を思い浮かべるとその時の姿が蘇る。

Sissinghurst white garden

京都府立植物園とロンドンキューガーデン

次に私たちを楽しませてくれるのはバラ。京都府立植物園のバラ園とロンドンキューガーデンのローズガーデンはとても似ている。温室もキューガーデンをお手本に作られたようだ。幼いころから何度となく訪れていたせいかバラの季節になると植物園のローズガーデンに行きたくなる。

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Sissinghurst white garden

英国の好きなバラ園はシシングハーストのホワイトガーデンのバラのアーチ。
傘のように四方に広がった一重のアルバのバラは優美でインパクトがある、
このお庭は「世界一ロマンチックなお庭」と言われているのだがそのゆえんは
このバラのアーチに違いないと確信している。

様々な種類が見られるクレマチス

クレマチスと呼ばれるテッセンもイングリッシュガーデンでは様々な種類を見ることができる。リーズ城の中庭カルペパーガーデンのクレマチスは壁面をうまく這わせていてコーナーごとに異なる表情を見せてくれる。クレマチスの咲き終わった後、花芯だけが伸びて髭のようになる。それを英国では「おじいさんのひげ」と呼んでいる。本でしか見たことがなかったクレマチスのひげを見た時イングリッシュガーデンに来ていることを実感した。

Sissinghurst white garden

残念ながらクレマチスが素晴らしい場所が京都では思いつかない。
少し時間をかけて探してみたい。

初めて英国の庭を訪れて驚いたことは訪れる7月に日本の春・夏・秋の花までが一斉に咲いていたことだ。イングリッシュガーデンが華やかで美しいのは実はこの辺りにも秘密があるのかもしれない。

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この記事を書いたライター

 
英国のフラワースクールで認定書を取得後、ロンドンのリバティとハロッズで個展を行う。
東京・青山と京都でフラワースクール「Flower box」を主宰。
日英フラワーアレンジメント協会チェアーパーソン。
日本インド協会に招かれインド・バンガロールで、また在英日本大使館の後援でロンドンチェルシーオールドタウンホールにおいてデモンストレーションを行う。
英国最古のリーズ城でサマースクールを、また日本では英国デザイナーを招聘してオータムスクールを開催。

著書は『かわべやすこの英国風ブライダルフラワー』『幸せを呼ぶ花飾り』『かわべやすこの京都・ロンドン花物語』(淡交社刊) 他多数。
英国デザイナー『ポーラプライクのフラワーアレンジメント』の日本語監修を行う。

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