そんな場面を思い出してみると、「毒性なことしよるな」、「毒性な奴やな」といった具合であった。今でいえば、「ひどいことしよるな」、「ひどいことする奴やな」くらいになる。

今日では、「毒性な」は「えぐい」「えげつない」に取って代わられたように思う。この「えぐい」も「えげつない」も京ことばであるが、今でも使っているので、またの機会に取っておくことにする。

話を戻すが、「毒性な」ということば、程度の差における最高レベルのひどさを表しているように思うが、私も家人も含めて、周囲の人々がそんなことばで表すようなひどい目にあうことやひどい目にあわすことをしていなかったのだろうと思うと、ホッとする。

何か時代劇の悪代官や悪商人を思い出すが、みなさんはどのように感じられただろうか。京ことばを話して普及して欲しいと思う反面、こんなことばは使わないにこしたことはないようにも思う。

けれど、マルチ商法で老人をだますようなあくどいニュースの時、一度「毒性なことしよるな」と妻に言ってみようかなと思う。妻はどんなふうに答えるだろうか。
 

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この記事を書いたKLKライター

京ことば研究家
西村 弘滋

 
京ことば研究家
故井之口有一・堀井令以知両氏の「京ことば研究会」で、京ことばとことばの採集方法を学ぶ。京ことばの持つ微妙なニュアンスの面白さを追い続けている。

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