Episode14『竹と神様(前編)』で、竹の不思議な生態から感じられる神秘性が、神様と繋ぐ神聖なものとして扱われた、という事を書きました。
笹の葉が、神楽や福笹で使われる理由はそこにあるようです。

Episode13『竹の音』では、笙や竜笛など、竹で作られた楽器が雅楽で使われている事を書きました。神楽で奏でられるのも、これらの雅楽器が使われています。
京都・下京区にある市比賣神社。京都においては、市比賣神社の宮司さんが雅楽を教え始めたことから、昭和43年より「いちひめ雅楽会」として、文化的遺産である雅楽を研究されています。

このように竹と神様の深い関係があります。

調べていると、笹や楽器の他にも、いやある意味、もっと深い関係がありました。竹や筍が御神体となっている神社があるのです。これも、竹や筍の神秘性や生命力が由縁なのでしょう。
その中でも、茨城県常総市の「三竹山 一言主神社」は『三岐の竹(みつまたのたけ)」が御神体です。(Kyoto Love Kyotoで、他県の事を書いていいものかどうか? まっ、いいか。)
 
『今より1200年以上昔のこと。今の社殿のある辺りに奇しい光が現れ、忽然と筍が生じ三岐の竹へと成長しました。神事を行ったところ、「私は一言主大神[ヒトコトヌシノオオカミ]である。この“三岐の竹”を私とおもって末永くおまつりしなさい。」と大神より御託宣があった、という言い伝えがあります。』(一言主神社HPより抜粋引用)
この神社のある場所が「三竹山」と呼ばれるのも、三岐の竹に因んでいるそうです。

【三岐の竹(みつまたのたけ)】とは、どのような竹でしょうか?
三岐を紐解く前に、まず【二又の竹(ふたまたのたけ)】について。※数が少ない方が説明しやすいので。

二又竹

二又竹

【竹の二又】という諺(ことわざ)があります。「二又の竹は極稀であることから、ないもののたとえ」という意味です。
ちなみに、こういう諺もあります。【竹藪に矢を射る】。これは、「矢は竹をそれることから、無益な事のたとえ」です。竹藪で仕事をしている最中に、矢が飛んで来たら、それは恐ろしい。無益ですから、そんな危ない遊びはやめましょう。

話が逸れました。二又に戻ります。

二又竹

二又竹

二又竹(二股竹・二岐竹)。竹に生長する過程で、何かの理由で、棹が途中で二つに分かれる事があるのです。元は一つの棹が、二つの棹になり、それぞれが生長します。もちろん、稀にしか起こらない現象なので、二又竹(ふたまただけ)は貴重な竹です。
二つに分かれるどころか、これも何らかの原因で三つに分かれたのが三又竹(みつまただけ)。四つに分かれれば四又竹(よつまただけ)。これも竹の不思議さです。

四又竹

四又竹

竹ではありませんが、二又竹とは逆のケースが!
下鴨神社の相生社には、「連理の賢木(れんりのさかき)という御神木があります。二本の幹が途中で一つに結ばれていて、「京の七不思議」に数えられています。二つが一つに合わさることから、縁結びや家庭円満の御利益があるといわれています。こちらも、自然の神秘です。

話が逸れました。竹に戻ります。

神が宿る植物、竹。万葉集の中の一首で、神を祭る歌に「竹玉を繁に貫垂れ」という言葉があります。 
竹玉を繋いで首や腕に掛ける。つまりは、竹のネックレス、もしくはブレスレット。神が宿る竹を身に着ける事で、心の悩みや身の危険守ってくれる、今でいうパワーストーン。
竹の神秘性を垣間見る歴史的証拠です。
ただ…竹のネックレスを彼女にプレゼントは…今の時代、さすがに…どうかな?

いや、七月七日には、彼氏にもらった竹のネックレスを着けて、願い事を書いた色紙を笹の葉につけ、一年に一度だけ会える事を楽しみにしている織姫と彦星に思いを馳せると、きっといいことがある、と思いますよ~。
笹は、神様と繋がるもの。サラサラした笹の葉が、願いを神様に伝えてくれて、二人の気持ちを繋いでくれる、かもね。

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この記事を書いたKLKライター

銘竹問屋四代目・ギタリスト
利田 淳司

 
1967年京都市生まれ。
関西学院大学法学部卒。
1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

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利田 淳司

 
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1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
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|銘竹問屋四代目・ギタリスト|竹/明智藪/嵐山/祇園祭/ギター

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