竹と神様(前編) 僕は京都の銘竹問屋  Episode-14

商売繁盛の「えべっさん」。この福笹は、草むらのように生えている背の低い笹ではなく、孟宗竹の枝、なんです。大きな竹を伐り、その上の方に出ている葉のついた枝。それが福笹の笹となります。
西宮神社と今宮戎神社と京都ゑびす神社。この三社が日本三大えびすと言われていますが、福笹は京都ゑびす神社の独自の御札が広まったものだとされています。

『「節目正しく真直に伸び」「弾力があり折れない」「葉が落ちず常に青々と繁る」ことから竹の葉が使われています。』
※京都ゑびす神社ホームページから引用

竹と神様には、深いつながりがあります。
神事で神様への奉納の為に行われる舞である神楽(かぐら)。巫女さんが手に持っているのは笹。

神楽の始まりは「古事記」・「日本書紀」で書かれている「天岩戸の神隠れ」伝説。天照大神[アマテラスオオミカミ]が天の岩戸に籠ったとき、天鈿女命[アメノウズメノミコト]が、天の香具山にある笹を取って舞い、その楽しそうな声を聴いて天照大神が姿を現したところを連れ出した、という神話。
天鈿女命が笹を持ったことが始まりとされています。
笹の葉のついた竹は、神様が乗り移りやすく、神様の言葉を伝えるものとして扱われてきました。

では、なぜ竹?なのでしょうか。
竹の持つ特性を書き並べてみましょう。


生長がとにかく早い事

筍が地表に出て3週間もすると10mほどの大きさになります。ハヤタ隊員が変身して巨大化するときのウルトラマンみたいなものです。(ウルトラセブンは、ミクロサイズにもなれますが。)

▶︎巨大すぎる筍の群れ!?逆境にも負けないしぶとい竹藪

常に緑色である事

幹も緑なら、葉も緑。そして、葉は一度に紅葉せず、順番に変わっていくので、一見では葉の色が変わっていることに気づきません。全部がいつも緑色。超人ハルクみたいなものです。

▶︎地味な竹の紅葉?~次代への執念~

真っ直ぐに成長し、節目が正しい事

節目。律儀なほどに正しいのです。
どの位置でもよいので、連なる3つの節間の長さを測ると、“2番目の節間の長さ”は、“1番目の節間の長さ”と“3番目の節間の長さ”の平均値になる、と文献にありました。
試してみました。ウチにある竹、5本程、測ってみました。確かに平均値!「ウッワぁ、ホンマや」と思わず声をあげました。
鬼滅の刃の竈門禰豆子の竹は、、こうなっていないなぁ。変種の竹???

節目正しい節3つ

120年に一度しか花が咲かない事

マダケの場合ですが、120年に1度、開花をし、全国一斉に枯れた後、また120年の周期を始めます。逆に言えば、120年に1回しか竹が枯れることがない。竹は無限に続くもの。手塚治虫の火の鳥?

▶︎120年に1度しか咲かない花?~明智の謎~

加工が容易なうえ、殺菌力がある事

薄く割った断面

竹は、簡単に割ることができ、薄くすることができます。薄くした木口は鋭利な刃物のようで、うっかり触ると危険です。
安産の御利益があるとして祀られている木花開耶姫[コノハナノサクヤビメ]。天照大神の孫・邇邇芸命[ニニギノミコト]との子供が産まれた時に、へその緒を竹の刀を使って自分で切った、と日本書紀に記されています。

▶︎自分で手術…!? 利田さんインタビュー記事

力強い繁殖能力をもつ事

土中に張り巡っている地下茎から、毎年毎年、沢山の筍が産まれ、竹となった後は、次の筍の為に、栄養を送り、次の春に備えます。子孫繁栄の願いを表現しているかのようです。

中が空洞である事

竹は中が空洞です。これが子宮のイメージとして捉えられたことが、竹取物語の起源とも言われています。キャラで言うと、かぐや姫?いや、これは、かぐや姫そのまんま、です。

竹の生命力、清廉さ、力強さ。竹の不思議な生態から感じられる神秘性が、神様と繋ぐ神聖なものとしての位置にいたのでしょう。
  
続きは、 後編で。

【次の記事】竹と神様(後編) 僕は京都の銘竹問屋  Episode-15

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この記事を書いたライター

 
1967年京都市生まれ。
関西学院大学法学部卒。
1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

|銘竹問屋四代目・ギタリスト|竹/明智藪/嵐山/祇園祭/ギター