【僕は京都の銘竹問屋シリーズ】
Episode 1 なんで竹は、京都やねん???Episode 2 竹林の小径、嵐山に行って見た!
Episode 3 僕は京都の銘竹問屋(前編)
Episode 4 僕は京都の銘竹問屋(後編)
京都の秋の色、赤色。春に見られる桜色の淡い奇麗さと同じほど、秋には一面が鮮やかな色に変わる景色を京都は愉しませてくれます。
そして紅葉の後、レッドカーペットのように広がる落ち葉の風景も、思わず写真に収めたくなる美しさです。
とっても地味な竹の紅葉…
さて、竹。これもなんと紅葉します。
思い切り地味、ですが。
それも、木とは違う季節で。
紅葉しているなんてフツウは気づきません。
『タケくん、モミジくんより目立っていいから、もっと前に出てギターソロ弾こうぜぃ!』と鼓舞してみても、タケくんは『いえ、僕、後ろでこっそり弾いときます』と言うようなシャイなキャラなのでしょう。
スポットライト浴びて、ボーカルより前でギターソロを弾くことを至福の時と感じている僕には、タケくんのこの地味な紅葉が理解できません。
竹の紅葉は、なぜ地味なのか。今回は、その原因を探ってみましょう。
竹って春に紅葉するの?
まずは時期。【竹の紅葉は、春先!】。
モミジと逆やん。。。
なぜ春先に紅葉するのかを紐解くために、竹の生育を順に追ってみます。
早春に地表に顔を出した筍は、驚異的なスピードで伸び、10日程で10mを超える巨大な筍となり、根元の方から徐々に皮(時代劇でおにぎりを包んでいるアレ)を脱ぎます。
2~3ヶ月かけて、枝葉(七夕の短冊を付けるアレ)を広げて生長を完成させます。
その翌年からは、竹は葉で作る養分を全て地下茎の生長の為に使います。
地下茎は毎年の8~9月頃にピークを迎えるタイミングで伸び、生長を終えた以降は、地下茎で蓄えた養分を使って、筍の元となる芽が生長し、春に筍となります。
筍を生み出せるよう、親となる地下茎に沢山の養分を送る為に、一年で一番多く光合成をしなければならない。
この忙しい時に、クロロフィルを失くして紅葉したり、ましてや落葉などしていられない!
となると、紅葉できるのは、筍を出すという一大事業を終え、翌春へのパワーを蓄えるまでの間隙。
暖かい地方では孟宗竹なら4月~5月、真竹なら5月~6月の頃。
つまり春先が竹の紅葉の時期となるのです。
高速!紅葉イリュージョン!
次に紅葉の仕方。【早着替えをする!】
イリュージョン、したいの???
一大事業を終えたとはいえ、一服などしていられません。
そう、竹になった途端、地下茎に養分を送らないといけないのです。
一難去って、また一難。次から次へとせわしない。
紅葉した葉が落葉するのはモミジと同じです。
葉緑素を失い養分を作り出す事が出来なくなった葉。
それを維持する為の養分を節約するために、葉は落ちていきます。
そこまでは落葉樹と変わらないのですが、竹は落葉する時にはすでに、その葉の根元に新しい緑の葉が作られていて、落葉と同時に若葉が開く、という仕組みです。
一瞬で赤が緑に変わったと錯覚する。
“早着替え”の舞台を見ているようなものです。
上から順番に紅葉する?
そして、【一斉に紅葉しない!】
そんなん気合い入れて見ていないと、わからへんやん。。。
一本の竹についている葉の色が全て変わるのなら気づきもするのですが、上の方の葉から下の方へと徐々に紅葉していくのです。
紅葉した葉は落葉し、早着替えで若葉に葉変わりするので、代わる代わるに紅葉しているようなもの。
常に緑の中に赤がある状態。
おまけに、ほとんどは春先に葉変わりするものの、一部は秋までの間に葉変わりをするので、シーズンオフでもまだ残っている紅葉があったりもします。
葉変わりの時期を分散することで、虫害に合いやすい若葉が減ることへの危険を避ける為、だとか。
種を維持し続ける為の、竹なりのセーフティネットです。
ぶれずに仕事を果たす。シブいタケくんの個性
春に紅葉し、しかし一挙には紅葉せず、落葉するやいなや葉変わり。
何より、赤なのか茶色なのか、発色さえも人目を引かない。
京都が華やかな色で飾られている頃、緑の葉が懸命に働いて、地下茎が要るものを送り続ける。
竹がこのような地味な紅葉を生態としているのも、全てが次代へ繋げることに執念をかけている表れ。
竹の紅葉に気づくのは、きっとよほどのマニアでしょう。モミジの紅葉とは大違い。艶やかさの欠片もありません。
でも、僕はもう言わないよ。『タケくん、モミジくんみたいにスポットライトを浴びろ!』なんて。
目立ちはしないけれど、ぶれずに仕事を果たす。『それがタケくんの個性だ!』