昭和41年から祇園祭に携わり今日まで半世紀を越えやってきました。父親が昭和41年から月鉾の理事長を平成3年まで務めており、そのため私も雑用から始めて月鉾の様々な行事に関わってきましたが、長年携わってきた中で、昨年度は初めて巡行、鉾建て等の主要な行事が全て中止という寂しいお祭りとなってしまいました。その残念さを踏まえて、次は是が非でも最低、鉾建ては実現したいという思いで今年は準備を進めてきました。

なぜ鉾建てをやらなければならないか。作事方(建て方)の若手を育てていくことが是非とも必要だからです。鉾建ては年に一度限り。10年参加してもたった10回しか手順や作業を覚える機会はありません。その上、2年も連続で鉾建てが中止になると、せっかく覚えてきた事柄がゼロに戻ってしまう恐れがあります。鉾が建つと見物人が集まられるという可能性を考えるとためらわれる気持ちもありましたが、技術の継承の重要性が勝ると考えました。

皆の願いが通じ、お陰さまで今年は鉾建てが出来るという形になりました。保存会一同たいそう喜んでおります。今年の祇園祭は昨年と違い幾らか楽しみが違ってきています。作事の若手にはこの貴重な機会を無駄にすることなく、先輩方の技術と心意気を受け継いでいただきたいと願っています。

ただ、鉾を建てるにも費用が掛かります。そのために今年は授与品のインターネット販売をすることに致しました。しかしこれがなかなか大変な作業とわかりました。受注の仕組みなどは保存会の若手が作り上げてくれましたが、受けた注文に対して授与品の検品・袋詰め・発送までの作業のために、いつものお祭りとは違う人手や時間が必要になります。しかし、ネット販売のおかげで、例年にはない他府県からのお申し込みを多く受けていることは、嬉しい誤算でした。月鉾の厄除けちまきが京都のみならず全国に発送されることで、このコロナ感染が収束するよう願っています。

私事ですが、昨年の暮れに人間ドックで内臓に異常が有るのではという結果が出たため検査入院し、やはり腫瘍があるということで手術に踏み切りました。すい臓がんと聞いたときは、自分自身もう駄目かと思いましたが、無事手術も終わり1ヶ月半の入院で済みました。これも八坂神社のお陰と感謝しています。退院はなんとか祇園祭に間に合い、六・七分の体調に戻って、大好きな祇園祭が出来る事を大変喜んでいます。

私も祇園祭月鉾の行事に携わってから55年を数えます。雑用から始め、今は理事長という重責を背負い、保存会・囃子方・作事方とのコミュニケーションをとりながら楽しくお祭りをやっていきたいという願いで続けてきました。

異例づくめとはなりますが、コロナ退散を祈念した今年の祇園祭が無事終了する事を願ってやみません。

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この記事を書いたKLKライター

公益財団法人 月鉾保存会理事長
斎藤 政宏

カオ―宝石 代表

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