竹と神様(後編) 僕は京都の銘竹問屋  Episode-15

Episode14「竹と神様(前編)」で、竹の不思議な生態から感じられる神秘性が、神様と繋ぐ神聖なものとして扱われた、という事を書きました。
笹の葉が、神楽や福笹で使われる理由はそこにあるようです。

▶︎竹と神様(前編) 僕は京都の銘竹問屋  Episode-14

Episode13「竹の音」では、笙や竜笛など、竹で作られた楽器が雅楽で使われている事を書きました。神楽で奏でられるのも、これらの雅楽器が使われています。
京都・下京区にある市比賣神社。京都においては、市比賣神社の宮司さんが雅楽を教え始めたことから、昭和43年より「いちひめ雅楽会」として、文化的遺産である雅楽を研究されています。

▶︎『竹の音(たけのね)』僕は京都の銘竹問屋  Episode-13

このように竹には神様との深い関係があります。

調べていると、笹や楽器の他にも、いやある意味、もっと深い関係がありました。竹や筍が御神体となっている神社があるのです。これも、竹や筍の神秘性や生命力が由縁なのでしょう。
その中でも、茨城県常総市の「三竹山 一言主神社」は『三岐の竹(みつまたのたけ)」が御神体です。

「今より1200年以上昔のこと。今の社殿のある辺りに奇しい光が現れ、忽然と筍が生じ三岐の竹へと成長しました。神事を行ったところ、「私は一言主大神[ヒトコトヌシノオオカミ]である。この“三岐の竹”を私とおもって末永くおまつりしなさい。」と大神より御託宣があった、という言い伝えがあります。」(一言主神社HPより抜粋引用)
この神社のある場所が「三竹山」と呼ばれるのも、三岐の竹に因んでいるそうです。

【三岐の竹(みつまたのたけ)】とは、どのような竹でしょうか?
三岐を紐解く前に、まず【二又の竹(ふたまたのたけ)】について。※数が少ない方が説明しやすいので。

二又竹

【竹の二又】という諺(ことわざ)があります。「二又の竹は極稀であることから、ないもののたとえ」という意味です。
ちなみに、こういう諺もあります。【竹藪に矢を射る】。これは、「矢は竹をそれることから、無益な事のたとえ」です。竹藪で仕事をしている最中に、矢が飛んで来たら、それは恐ろしい。無益ですから、そんな危ない遊びはやめましょう。

話が逸れました。二又に戻ります。

二又竹

二又竹(二股竹・二岐竹)。竹に生長する過程で、何かの理由で、棹が途中で2つに分かれる事があるのです。元は1つの棹が、2つの棹になり、それぞれが生長します。もちろん、稀にしか起こらない現象なので、二又竹(ふたまただけ)は貴重な竹です。
2つに分かれるどころか、これも何らかの原因で3つに分かれたのが三又竹(みつまただけ)。4つに分かれれば四又竹(よつまただけ)。これも竹の不思議さです。

四又竹

竹ではありませんが、二又竹とは逆のケースが!
下鴨神社の相生社には、「連理の賢木(れんりのさかき)という御神木があります。2本の幹が途中で一つに結ばれていて、「京の七不思議」に数えられています。2つが1つに合わさることから、縁結びや家庭円満の御利益があるといわれています。こちらも、自然の神秘です。

話が逸れました。竹に戻ります。

神が宿る植物、竹。万葉集の中の一首で、神を祭る歌に「竹玉を繁に貫垂れ」という言葉があります。 
竹玉を繋いで首や腕に掛ける。つまりは、竹のネックレス、もしくはブレスレット。神が宿る竹を身に着ける事で、心の悩みや身の危険守ってくれる、今でいうパワーストーン。
竹の神秘性を垣間見る歴史的証拠です。
ただ…竹のネックレスを彼女にプレゼントは…今の時代、さすがに…どうかな?

いや、7月7日には、彼氏にもらった竹のネックレスを着けて、願い事を書いた色紙を笹の葉につけ、1年に1度だけ会える事を楽しみにしている織姫と彦星に思いを馳せると、きっといいことがあると思いますよ~。
笹は、神様と繋がるもの。サラサラした笹の葉が、願いを神様に伝えてくれて、2人の気持ちを繋いでくれる、かもね。

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この記事を書いたライター

 
1967年京都市生まれ。
関西学院大学法学部卒。
1915年創業の銘竹問屋・(有)竹平商店4代目、代表取締役。
NHK「BEGIN JAPANOLOGY」「美の壺」などのメディアへの出演や「第8回世界竹会議」の開催組織委員・「日本人の忘れ物知恵会議」のパネラー等を務め、日本の銘竹の美を海外・国内に向け発信する活動を行っている。

|銘竹問屋四代目・ギタリスト|竹/明智藪/嵐山/祇園祭/ギター