昔はこんな事をやってました
江戸時代の中期、祇園御霊会(祇園祭を江戸時代までは祇園御霊会と呼んでいました)の5月晦日(現在では7月10日)の神輿洗の時に、神輿を迎える神賑わいとして、お迎え提灯の行列が行われ、その夜は洛東第一の賑わいでした。
下図は、宝永元年(1704)に京都の名所を紹介した「花洛細見図」という観光案内書の中の祇園御霊会神輿洗の様子を伝えた一枚の絵です。またもう一枚は宝永元年から約50年後の宝暦7年(1757)に刊行され、祇園御霊会の事がとても詳しく書かれた「祇園御霊会細記」より、神輿洗お迎え提灯の様子の一場面です。いずれも神輿を迎えるお祝いとして、祇園町の町人が鳥居型や御幣、角樽、将棋の駒等のおめでたい変わった形の提灯を掲げて行列する姿や、祇園社(八坂神社)にお参りする姿が描かれています。
元々祇園町は室町期に、祇園社の参詣客を相手とする茶店が立ち並ぶところから、町が徐々にできあがりました。しかし、その規模は小さなものであり、今日の祇園町は、江戸初期の寛文年間(1661~1673)に鴨川の護岸工事が行われることによって洪水の危険がなくなり、鴨川から縄手通りにかけて土地が整備され、そこに常設の芝居小屋や茶屋街の祇園新地外六町が形成されたことにより、町は飛躍的に発展しました。町の発展は祇園御霊会にも変化をもたらし、従来の山鉾巡行や神輿渡御に加え、神の御座する輿を鴨川の清らかな水で清める、また神の降臨を祝す御生(御阿礼みあれ)の意味を持つともいわれる、神輿洗神事がこの江戸初期に行われるようになりました。
延宝四年(1676)黒川道祐という医者が著した「日次紀事」には、五月晦日の神輿洗の夜に町の家々では御神灯がともされ、神輿の供奉には芝居小屋の役者の名前を書いた提灯の行列が続き、洛東は大いに賑わったとあります。
その後、この役者の出す提灯が町の家々にも拡がっていく中で徐々に変化し、上図にあるように、芝居小屋の役者の提灯から遊び心満載の形の変わったものになっていったと考えられます。
江戸時代後期には、この変わった提灯は見られなくなりますが、単に衰退したのではなく、この遊び心は花街の連中にも伝播し、芸妓衆の華麗なる「ねりもの」が生まれたと私は考えています。
また昔のように祝い提灯(変わり提灯)を復活させたい
江戸の昔、神輿洗いの夜は洛東一の賑いであったといいます。これをもう一度復活させて新たな祇園の賑いにしたいと、大変急でしたが祇園町の有志の方々にお声掛けし、平成29年の7月28日にまず7灯を作製させてみました。これは、10日の神輿洗で鴨の水に乗って八百万の神々が集まられ、ひと月に及ぶ祭礼が滞りなく無事に終わり、また鴨の水よりお帰りになられる神々を祝い感謝し、お送りするという意味で行列を斎行しました。その時の模様が下記の写真です。
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また帰社後、神賑いとして祇園町の南側から花見小路に出て、富永町から切通しを通り、新橋までお囃子を付けて練り歩きました。
翌平成30年は、これを祇園町の方々に喜ばれるような形ある組織にしようと「祝い提灯講社」を設立し、皆さんの賛同を得て7灯から20灯に増やすことができました。10日は四条通りを少し行列しましたが、28日は大々的に祇園町一帯を練り歩きするべく、巡行ルートを作成し、警察の許可も得て準備万端整いましたが、何とこの日にまさかの台風が京都を直撃することとなり、暴風雨警報が出てしまい、安全に配慮して神輿の四条大橋への渡御自体も中止となり、境内において清めの神事が行われるという、私も生まれて初めての経験をしました。むろん警報発令下においては中止もやむを得ず、幻の提灯行列となってしまいました。
さて今年は、祝い提灯講社の2年目、実質デビューとなります。昨年に比べ更に有志を集め、提灯の数は32灯になりました。
10日は、四条商店街さんのお許しを得て四条通石段下から花見小路の両側にかけてこの提灯を並べ、神輿はもちろん、祇園万灯会さんのお迎え提灯も正にお迎えいたします。
28日は、川端通りを起点にして東に向かって両側に提灯を並べます。神輿をお迎えし、四条大橋のお祓いの後帰社される神輿をお見送りして、そこから練り歩きがスタートいたします。四条花見小路を上がり富永町を東上して祇園東さん一帯、新橋辰巳大明神から末吉町、切通しを経て祇園甲部北側一帯、そして四条を渡って祇園甲部南側の西花見小路から歌舞練場前を通り、花見小路を北上して拠点の弥栄ふれあいサロンに帰着します。
その間約2時間、道中を32灯の提灯で埋め尽くし、お囃子を付けて賑やかに練り歩きます。この行事が祇園町の絆を深め、この町の新たな賑いの一助となり、この町に住む老若男女全ての人が楽しめるように、この行事を大切に育てていきたいと思っています。
どなた様も、どうぞご覧ください。
※2019年夏の記事です。
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